恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
「どうして……? なんで彼女なの!?」

 感情をぶつけるように問い詰められ、充輝は少し言葉を探しながらも正直な気持ちを語った。

「初めはただ、気になる存在だったけど……気づいたら惹かれてた」
「何それ? あの人にそこまでの魅力があるの?」
「あるよ」

 充輝の言葉にエマは更に声を震わせる。

「私は? 私には、魅力がなかった?」
「そうじゃない。エマは魅力的だと思う」
「だったら――」

 充輝は視線を逸らさず、静かに続けた。

「でも、向坂さんは、そういうのじゃないんだ。きちんと説明出来たら良いんだけど、何ていうか……気づいたらもう――他の選択肢が消えるくらいに、彼女しか見えなかったんだ」
「意味が分からない……」

 納得できないとでも言うように、エマは感情を吐き出した。

「私、ずっとミツキのこと好きだったよ? 仕事も出来て、格好良くて、頼りになって、優しくて……。ずっと好きって言いたかった。けど、ミツキが誰にも本気にならない人だって分かってたから、だから、友達でいる道を選んできたのに……っ」

 初めて知るエマの想いに充輝の胸には強い後悔が広がる。

 これは曖昧な優しさを選び続けてきた自分が全て悪いのだと。

「ごめん」

 充輝は逃げずに、はっきりと告げる。

「どんなに想ってもらっても……エマのことは同僚としてしか見れない。本当に、ごめん」

 充輝のその言葉に、自分が決して“特別”にはなれない現実を突き付けられエマは唇を噛みしめ、涙を堪えるように立ち上がると何も言わずに店を飛び出して行った。

 残された充輝はその背中を追いかけることが出来ず、ただ静かに見送ることしか出来なかった。
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