恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
 充輝からはっきりと想いを告げられた週末以降、エマは意識的に二人と距離を置くようになっていた。

 視線が合っても、業務以外で言葉を交わそうとはしない。

 まるで初めから関わりが無かったかのようによそよそしい態度だった。

 そんなエマの行動は当たり前だと充輝は理解していたため、無理に距離を詰めようとはしなかった。

 ただ一人、仕事の都合でエマと行動を共にせざるを得ない来海だけが、気まずさを胸に抱えたまま日々を過ごしていた。

 そうして二週間ほどが過ぎ、海外支社の社員たちが日本での研修を終えた日の夜、各部署合同で行われた送別の飲み会は賑やかに進んだものの、三人が交わす言葉はほとんどなかった。

 約二時間で送別会はお開きとなり、二次会へ向かう者、帰路につく者が入り混じる解散間際のこと、

「ミツキ」

 人の波が途切れかけたその時、エマは充輝の名を呼び止めた。

「話があるんだけど……少しだけ、いい?」

 その言葉に、充輝の隣にいた来海は二人きりにした方がいいのだろうかと一瞬躊躇い、この場を離れようとするけれどそれを察した充輝がそっと手で制した。

「……ここに居て」

 そのやり取りを間近で見ていたエマは、そのことについては特に何も言わず、話を続けていく。

「この前は……突然、飛び出して行ってごめんなさい……あれから、避けてたことも……」

 エマの謝罪に充輝は首を振る。

「いや、俺の方こそ、ごめん」

 互いに短く謝罪を交わすと、言葉の切れ目に微妙な沈黙が落ちた。

 するとエマは一度だけ来海に視線を移してすぐに充輝を真っ直ぐ見据えると、

「私ね……本当に、ミツキのことが好きだった」

 迷いのない、まっすぐな言葉を口にしたあとで、更に思ったことを包み隠さず話していく。
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