恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
 他愛のない会話と酒が進み、一時間ほど経った頃、大輔はふと充輝へ視線を向ける。

「羽柴さんって、モテますよね?」
「……急に何ですか」
「初めから思っていたんですよ。優しいですし、行動力もありますし」
「いや、別にそんなことは無いですよ。っていうか寧ろ、真白さんの方がモテますよね? 現に女子社員たちも注目していますし」
「それは違いますよ。俺の場合、異動して来たばかりで気になる、それだけですって。羽柴さんみたいに、ちゃんと一人の人を見るタイプの方がモテると思いますよ」
「……それってどういう意味ですか?」
「一途な人ってことですよ。ほら、恋人にするなら一途な人の方が安心じゃないですか。向坂さんもそう思いませんか?」

 不意に振られた来海は少し目を丸くしながらも、

「……そうですね」

 無難な返答をすると、大輔は満足そうに頷いた。

「ですよね」

 それから来海をジッと見つめていき、

「それはそうと、向坂さんも一途そうですよね。向坂さんと付き合える男の人は幸せだろうなって思いますよ」
「そんなことは……」

 照れたように視線を落とす来海へ、大輔は更に言葉を重ねていく。

「羽柴さんも、そう思いませんか?」
「……そう、ですね」

 そう短い返答をしたその時、テーブルの上に置いていた充輝のスマートフォンが震えたことで、会話は一旦断ち切られた。
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