恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
「ごめん……強引にしちゃって……」

 先程までの余裕が無い表情は消えていて、いつものように優しく気遣うように声を掛ける充輝。

「大丈夫……」

 微かに笑みを浮かべて「大丈夫」だと口にする来海だけど、力が抜け掛けた身体では支えられながらその場に立つのがやっとの状態だった。

 そんな来海の様子を見た充輝は腕を差し入れると、来海の身体を優しく持ち上げる。

「え、ちょ……」

 軽く身体が浮いたことに驚いた来海は思わず充輝の首に腕を回した。

 抱き上げられた距離の近さに来海の落ち着きかけた鼓動は再び速まっていく。

 来海を抱き上げた充輝はそのまま歩いて行くと、ベッドの縁に降ろして座らせる。

 部屋の灯りが淡く二人を照らしていく中、充輝は無言で来海が着ていたコートを脱がせていくと、脱がせられることを恥ずかしく思った来海は、

「じ、自分で脱げる……から……ね?」

 次に着ていたセーターに手を掛けていた充輝の手を取ってやんわりとその動きを制していく。

 頬に熱が集まっているのを自覚しつつ、ぎこちなく自分のセーターの裾に指を掛けると、

「……私だけは恥ずかしいから……充輝も、脱いで?」

 小さくそう言って自分で服を脱ぎ始める来海。

 そして充輝も自身のコートのボタンへ指を掛けた。

 来海とは対照的に躊躇いの無い仕草でボタン外して肩から滑らせるように脱ぐと、次に手を伸ばしたのはスーツの上着で、コート同様に迷い無く脱いでいく。

 そして、ネクタイへ指先が移り結び目を緩めてするりと引き抜くと喉元が露わになり、最後にYシャツのボタンを上から一つずつ外していくたび白い布地の隙間から鍛えられた胸板が覗き始めていき、布が肩から落ちて腕を抜き終えた時、均整の取れた筋肉の線がはっきりと時折盗み見ていた来海の視界に現れて思わず息を呑んだ。
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