恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
それからというもの充輝の胸の内には常に小さな火が燻り続けていた。
大輔の姿を視界に入れるだけで無意識に肩へ力が入り、仕事中であっても意識はどこか上の空で、些細なミスが目立つようになっていった。
「羽柴、この資料、数字がズレてるぞ?」
「すみません、すぐ修正します」
焦れば焦るほど手元が狂い、確認不足やミスが続く。
その一方で大輔は変わらず淡々と業務をこなし、成果を積み上げていた。
「真白さん、この件もお願いします」
「はい」
任された仕事は確実に仕上げ、報告も的確。
会議では簡潔に要点を押さえていることで上司からの信頼も厚く、自然と周囲の評価は高まっていく。
「やっぱり真白さんって優秀だよな」
「仕事早いし、気も利くし」
「……それに比べて、最近の羽柴さんどうしたんだろうな。前はもっと安定してたのに」
そんな囁きが、充輝の耳に入らないはずもなかった。
そのせいか、来海と一緒にいる時間でさえ充輝の表情から余裕が消えていった。
「充輝? どうしたの、さっきから黙って……」
「別に」
短く返しながらも来海を抱き締める腕の力は緩まず、唇を塞いでキスをした後は決まって彼女の首筋へ下がっていく。
「ちょ、……充輝――ッ!」
「駄目?」
「……ダメ、じゃ……ない、けど……」
以前よりもキスマークを付ける頻度が増えていることに気付かないふりをするのが難しくなっていた来海。
(……大丈夫、なのかな)
社内で耳に入る噂も来海の不安を増やしていく。
「最近ピリピリしてるよね、真白さんと羽柴くん」
「真白は相変わらずだけど羽柴がなあ……」
来海は二人の仲が悪化してしまったのは自分が原因なのではないかと分かっているからこそ、余計に心配になり、だからこそ充輝の不安が埋まるならと来海は常にされるがままの状態だった。
そんな空気が社内に広がり始めて暫く過ぎた頃、
「羽柴さん、是枝さんから内線です」
内線を受けた同僚が、少し言いにくそうに伝えてきた。
「……是枝さんが?」
その言葉の意味を理解するのに時間はかからなかった。
内線相手の是枝さんというのは社長補佐の是枝 和重。
彼は充輝の父親である社長が唯一信頼を置いている部下で、右腕とも言える存在。
彼からの連絡があったということは社長が呼んでいることを示しているのだ。
最近の業務態度や成果は、当然のように上へも報告が上がっているのだろう。
『社長が今すぐ来るようにとのことです』
「……分かりました」
そう答えつつも今の呼び出しが穏やかな内容でないことをはっきりと理解していたからなのか額には、じわりと汗が滲んでいた。
大輔の姿を視界に入れるだけで無意識に肩へ力が入り、仕事中であっても意識はどこか上の空で、些細なミスが目立つようになっていった。
「羽柴、この資料、数字がズレてるぞ?」
「すみません、すぐ修正します」
焦れば焦るほど手元が狂い、確認不足やミスが続く。
その一方で大輔は変わらず淡々と業務をこなし、成果を積み上げていた。
「真白さん、この件もお願いします」
「はい」
任された仕事は確実に仕上げ、報告も的確。
会議では簡潔に要点を押さえていることで上司からの信頼も厚く、自然と周囲の評価は高まっていく。
「やっぱり真白さんって優秀だよな」
「仕事早いし、気も利くし」
「……それに比べて、最近の羽柴さんどうしたんだろうな。前はもっと安定してたのに」
そんな囁きが、充輝の耳に入らないはずもなかった。
そのせいか、来海と一緒にいる時間でさえ充輝の表情から余裕が消えていった。
「充輝? どうしたの、さっきから黙って……」
「別に」
短く返しながらも来海を抱き締める腕の力は緩まず、唇を塞いでキスをした後は決まって彼女の首筋へ下がっていく。
「ちょ、……充輝――ッ!」
「駄目?」
「……ダメ、じゃ……ない、けど……」
以前よりもキスマークを付ける頻度が増えていることに気付かないふりをするのが難しくなっていた来海。
(……大丈夫、なのかな)
社内で耳に入る噂も来海の不安を増やしていく。
「最近ピリピリしてるよね、真白さんと羽柴くん」
「真白は相変わらずだけど羽柴がなあ……」
来海は二人の仲が悪化してしまったのは自分が原因なのではないかと分かっているからこそ、余計に心配になり、だからこそ充輝の不安が埋まるならと来海は常にされるがままの状態だった。
そんな空気が社内に広がり始めて暫く過ぎた頃、
「羽柴さん、是枝さんから内線です」
内線を受けた同僚が、少し言いにくそうに伝えてきた。
「……是枝さんが?」
その言葉の意味を理解するのに時間はかからなかった。
内線相手の是枝さんというのは社長補佐の是枝 和重。
彼は充輝の父親である社長が唯一信頼を置いている部下で、右腕とも言える存在。
彼からの連絡があったということは社長が呼んでいることを示しているのだ。
最近の業務態度や成果は、当然のように上へも報告が上がっているのだろう。
『社長が今すぐ来るようにとのことです』
「……分かりました」
そう答えつつも今の呼び出しが穏やかな内容でないことをはっきりと理解していたからなのか額には、じわりと汗が滲んでいた。