恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
 その夜、充輝は来海に昼間の出来事を話した。

「……今日、親父に呼ばれたんだ」
「え……?」
「最近の仕事についてと、……来海と、交際していることについても指摘されたよ」
「私と……?」

 それを聞いた来海の表情に不安が走る。

「もしかして、反対されたとか?」
「いや、そこは問題ないし、そのことについては咎められもしなかった」
「本当に?」
「うん、本当に。それについては何も言われてないから安心して」

 そう言ってから充輝は小さく息を吐いた。

「……ただ、仕事については色々注意された。それについては俺が勝手に焦って、空回りしてたのが悪いし……何よりも、真白さんに張り合って、仕事も中途半端になって……それに、来海まで不安にさせたよね……」
「充輝……」
「ごめん」

 素直な謝罪に来海は一瞬驚いたように目を見開き、それからふっと柔らかく微笑む。

「ううん。大丈夫だよ」

 そっと手を伸ばして充輝の腕に触れる。

「こうしてちゃんと話してくれたでしょ。私はそれで十分だから」
「来海……ありがとう」

 包み込むような声音に胸の奥の硬さが解けていくのを充輝は感じ、これからはより一層頑張ろうと思えていった。

 それからの充輝は、少しずつ落ち着きを取り戻していく。

 大輔を意識していた視線は減り、業務へ向ける集中力も戻ると周囲からの評価も上がっていく。

 けれどそれでも、

「やっぱり真白さん、すごいよな」
「安心して任せられるっていうかさ」

 評価の中心にいるのは依然として大輔に変わりなかった。
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