恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで【完】
その日の夜も、充輝は父親の前に立っていた。
しかし相変わらず、机の向こうに座る父親は書類から目を離さぬまま淡々と言った。
「またその話か。いい加減諦めたらどうだ?」
「嫌です」
充輝はどんな言葉を浴びせられようとも、真っ直ぐに立ったまま視線を逸らさない。
「海外支社の件も縁談の件も、俺は納得していません」
「お前の意見は聞いていない。これは会社の為だ」
「そんなのは横暴です」
一歩も引かない充輝を前にした父親はゆっくりとペンを置くと、冷ややかな視線を向けた。
「お前は私の後継者だ。何を優先すべきか考えれば分かることだろう? 前にも言ったが、それが嫌なら会社を辞めてこの家からも出て行け」
「…………っ」
室内の空気が張り詰める。
(……やっぱり、何を言っても無駄なのか……)
何度話しても意見を変える気が無い父親を前に充輝は諦め掛けていた。
「……今日のところは、帰ります」
それだけを告げると充輝は一礼して書斎を後にした。
充輝が去った書斎の中で父親は大きな溜め息を吐き、そして、社長補佐の是枝にメッセージを送る。
《充輝が一向に折れる気配が無い。アイツには何を言っても無駄だ。従って例の方法で進める。頼んだぞ》
そんな意味深なメッセージ内容を送った父親の口元は僅かに緩んでいた。
数日後、社長室に大輔の姿があった。
「失礼します。お話というのは?」
「真白くん、君に頼みたいことがある」
単刀直入な物言いに大輔は一瞬だけ目を瞬かせる。
「……私に、ですか?」
「ああ。例の海外支社の件は知っているか?」
「はい……噂で聞いた程度ですが……」
「話の通り、私の息子をあちらへやる予定だ。だがな、本人は決め兼ねているようだ。何故だか分かるか?」
「……もしかして、彼と交際している向坂さんの存在……でしょうか?」
「そうだ。彼女の存在がアイツの判断を鈍らせている」
「…………」
「そこでだ、君に頼みたいことというのは、彼女についてだ」
「ーーと、言いますと?」
「二人の距離を離して欲しい」
その言葉を聞いた大輔の口角は微かに上がる。
「具体的には?」
「そこは君に任せる。とにかく、二人を引き離せればどんな手段でも構わない。上手くいった暁には、君にはそれなりの待遇を用意しよう。どうだ、やってくれるか?」
「……承知しました」
頭を下げながら大輔はどんな方法で二人を引き離すか考え始めていた。
しかし相変わらず、机の向こうに座る父親は書類から目を離さぬまま淡々と言った。
「またその話か。いい加減諦めたらどうだ?」
「嫌です」
充輝はどんな言葉を浴びせられようとも、真っ直ぐに立ったまま視線を逸らさない。
「海外支社の件も縁談の件も、俺は納得していません」
「お前の意見は聞いていない。これは会社の為だ」
「そんなのは横暴です」
一歩も引かない充輝を前にした父親はゆっくりとペンを置くと、冷ややかな視線を向けた。
「お前は私の後継者だ。何を優先すべきか考えれば分かることだろう? 前にも言ったが、それが嫌なら会社を辞めてこの家からも出て行け」
「…………っ」
室内の空気が張り詰める。
(……やっぱり、何を言っても無駄なのか……)
何度話しても意見を変える気が無い父親を前に充輝は諦め掛けていた。
「……今日のところは、帰ります」
それだけを告げると充輝は一礼して書斎を後にした。
充輝が去った書斎の中で父親は大きな溜め息を吐き、そして、社長補佐の是枝にメッセージを送る。
《充輝が一向に折れる気配が無い。アイツには何を言っても無駄だ。従って例の方法で進める。頼んだぞ》
そんな意味深なメッセージ内容を送った父親の口元は僅かに緩んでいた。
数日後、社長室に大輔の姿があった。
「失礼します。お話というのは?」
「真白くん、君に頼みたいことがある」
単刀直入な物言いに大輔は一瞬だけ目を瞬かせる。
「……私に、ですか?」
「ああ。例の海外支社の件は知っているか?」
「はい……噂で聞いた程度ですが……」
「話の通り、私の息子をあちらへやる予定だ。だがな、本人は決め兼ねているようだ。何故だか分かるか?」
「……もしかして、彼と交際している向坂さんの存在……でしょうか?」
「そうだ。彼女の存在がアイツの判断を鈍らせている」
「…………」
「そこでだ、君に頼みたいことというのは、彼女についてだ」
「ーーと、言いますと?」
「二人の距離を離して欲しい」
その言葉を聞いた大輔の口角は微かに上がる。
「具体的には?」
「そこは君に任せる。とにかく、二人を引き離せればどんな手段でも構わない。上手くいった暁には、君にはそれなりの待遇を用意しよう。どうだ、やってくれるか?」
「……承知しました」
頭を下げながら大輔はどんな方法で二人を引き離すか考え始めていた。