【完結】旦那様、そろそろ離縁のご準備を〜契約結婚三年目、満了日を目前にして旦那様の様子がどこか変です〜
*
――二年前。レイモンドの公務に同行して訪れた軍港の売店。
そこでソフィアは、軍の天幕や、弾薬嚢に使われている、無骨な鉄製の留め具――スライドファスナーに目を奪われた。
鉄の歯が噛み合い、厚い帆布を一気に閉じていく。その圧倒的な機能性に、ソフィアは震えるような予感を覚えた。
『旦那様、見て! これ、ドレスに使ったら、侍女のいない女性でも一人で着替えられるようになるわ!』
『……軍需品を何だと思っている。こんな無骨な鉄の塊、ドレスに馴染むはずがないだろう』
呆れ顔のレイモンドをよそに、ソフィアは即座にイシュへ手紙を書いた。
『軍用のファスナーを、極限まで細く、しなやかに改良してほしいの。これは単なる留め具じゃない。女性を、誰かの手を借りなければ装えない不自由から解放する、魔法の道具になるわ』
イシュは「無茶を言う」と笑いながらも、帝国の技術者に命じて開発を成功させた。
ソフィアは、その完成したファスナーを「既製服ライン」の標準仕様にすることしたのだ。紐締めの苦痛から解放された女性たちは、こぞって『サーラ・レーヴ』の店舗へと詰めかけることになるはずだ。
――二年前。レイモンドの公務に同行して訪れた軍港の売店。
そこでソフィアは、軍の天幕や、弾薬嚢に使われている、無骨な鉄製の留め具――スライドファスナーに目を奪われた。
鉄の歯が噛み合い、厚い帆布を一気に閉じていく。その圧倒的な機能性に、ソフィアは震えるような予感を覚えた。
『旦那様、見て! これ、ドレスに使ったら、侍女のいない女性でも一人で着替えられるようになるわ!』
『……軍需品を何だと思っている。こんな無骨な鉄の塊、ドレスに馴染むはずがないだろう』
呆れ顔のレイモンドをよそに、ソフィアは即座にイシュへ手紙を書いた。
『軍用のファスナーを、極限まで細く、しなやかに改良してほしいの。これは単なる留め具じゃない。女性を、誰かの手を借りなければ装えない不自由から解放する、魔法の道具になるわ』
イシュは「無茶を言う」と笑いながらも、帝国の技術者に命じて開発を成功させた。
ソフィアは、その完成したファスナーを「既製服ライン」の標準仕様にすることしたのだ。紐締めの苦痛から解放された女性たちは、こぞって『サーラ・レーヴ』の店舗へと詰めかけることになるはずだ。