愚かな婚約者様、あなたの"浮気相手"は私の味方ですよ? 〜手を組んだ2人の才女による華麗なる制裁〜
23、セドリックの来訪
相応しい服装へと素早く着替えたカトリーヌは、セドリックが待つ応接室に向かった。
ノックをしてから中に入ると、そこには横柄な態度で侯爵家のメイドたちに奉仕をさせているセドリックがいる。立場的に断れないのをいいことに、隣に座らせたりマッサージをさせたりとやりたい放題だ。
「殿下、大変お待たせいたしました。皆、ありがとう。もう下がって大丈夫よ」
まずはとにかくメイドたちを助けようとカトリーヌが緊張しながら声をかけると、セドリックが不満げな顔を見せる。
「おい、なぜお前が勝手にメイドを下がらせるんだ?」
侯爵家のメイドなのだから当然であるが、セドリックの思考は国のものは全て俺のものである。
そんなセドリックに正論は通じないとカトリーヌは理解しているため、嫌がる自分の心を必死に押さえつけて、震えそうな唇を噛み締めてから口を開いた。
「そこは、わたしの場所ではないのでしょうか」
カトリーヌは自らのことは簡単に犠牲にするが、他人には優しく、他人のための方が勇気を出せるのだ。こうした方がコレットの作戦が上手くいくだろうという、少しの打算もあった。
しかし、どうしても僅かに手が震えるのは押さえられていない。
「ははっ、なんだ? お前が嫉妬か?」
セドリックは珍しいカトリーヌに夢中で、震えには気づいてないようだ。加虐的な笑みを浮かべて、カトリーヌを舐めるように見つめている。
「私に説教ばかりで全く可愛げがないつまらん女だと思っていたが、少しはそういうこともできるのではないか」
楽しげにそう言ったセドリックは、メイドたちを解放した。それにカトリーヌは内心で安堵したが、同時に焦りも覚える。
変に今までとは違うカトリーヌの姿を見せることで、セドリックが面白がって婚約を破棄したいという気持ちを持たなくなったら困るのだ。
絶対にコレットの邪魔だけは避けなければならない。
「婚約者以外の者と触れ合いすぎるのは、殿下の外聞に悪いですから」
いつも通りを意識して言葉を付け足すと、セドリックの顔には強い不満が浮かんだ。
「余計なことを言わなければいいものを。だからお前は誰からも好かれないんだ。本当に可愛くない女だな」
吐き捨てるようにそう告げると、すぐに何を思ったのかニヤッといやらしい笑みを浮かべた。
向かいのソファーを示し、偉そうに口を開く。
「そこに座ることを許可してやる」
素直に従ってカトリーヌが腰掛けると、セドリックはソファーの背もたれに踏ん反り返ったまま言った。
「今日私がここに来たのは、お前が浮気をしてるんじゃないかって噂を耳にしたからだ。まさか王妃になろうって女が他の男と浮気! そんなわけ、ないよなぁ〜?」
カトリーヌのことを責められるのが心底楽しいのか、セドリックはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。カトリーヌはやはりその話かと緊張しつつ、動揺を悟られないように気を引き締めた。
「なんのことだか、全く分からないのですが……」
「はっ、とぼけても無駄だ! こっちは確かな筋から情報を得てるんだぞ!」
「それは、どのような情報でしょうか」
「黒髪の男が屋敷に入って出てこないと聞いている。歳はお前より少し上ぐらい。お前の兄弟に黒髪はいないだろ? 浮気などするやつは王妃に全く相応しくない! 生まれた子供がどこの穢れた血を継いでるか分かったもんじゃないからな!」
怒りや蔑みを滲ませながら、勝ち誇ったように告げたセドリックに、カトリーヌは努めて冷静に答えた。
「黒髪のお方でしたら、おそらくお父様のご友人だと思われます。先日から屋敷に滞在しておられるのです」
「は?」
予想外な言葉が返ってきたのか、間抜けな声を上げたセドリックにカトリーヌは畳み掛ける。
「お父様とお客様は歳が離れておりますが、それは貴族の間では珍しいことではないでしょう。たまたま街で出会い、趣味で意気投合したと聞いております」
澱みないカトリーヌの反論に、セドリックは顔を怒りで赤くした。
そして無駄に立ち上がると、大声で怒鳴る。
「私に嘘をつくとは何事だ⁉︎」
これはセドリックが己の不利を察するとやる癖だ。おそらくカトリーヌが浮気をしているかもしれないという話に、碌な確認もせずに飛びついたのだろう。
貴族の浮気を追求するならば、証拠を集めて証人も準備しなければいけない。それこそ二人で寝室に入る様子の目撃者を多数準備したり、夜を共に過ごしたベッドのシーツを手に入れたり、普通はそこまでやるものだ。
「嘘ではございません」
カトリーヌはそう答えながら、これならコレットの作戦も上手くいくかもしれない。そんな期待を抱いていた。
「くっ……わ、私を誤解させたお前が悪いんだぞ⁉︎」
セドリックは浮気を追求するのは無理だと悟ったのか、こじつけのような怒りをカトリーヌに向ける。
「それについては、大変申し訳なく思っております。お父様にもお伝えしておきます」
ここは頭を下げるべきところだとカトリーヌが謝罪をすると、セドリックはやっと自分が優位に立てたと思ったようで、またソファーに座り直すと横柄に踏ん反り返った。
「ふんっ、分かってるならいい」
セドリックの中でカトリーヌが浮気をしているという話はなくなったようで、カトリーヌは心から安堵する。
(なんとか問題なく帰っていただけるかしら……)
そんな希望を抱いたところで、セドリックがカトリーヌに見下す視線を向けて言った。
「お前は身分だけしか取り柄がない女なんだ。それをはっきり自覚して、せめて私に迷惑をかけないようにしろ。社交は満足にできない、笑顔もない、可愛くもない、女らしい魅力もない、全くいいところがないくせに、そこに魔道具作りとかいう下賤の趣味まで持っている。私がお前と婚約してやってることに、もっと感謝すべきじゃないか?」
今まで何度も言われてきたことだが、エルベルトと過ごす時間があまりにも楽しすぎたからか、セドリックの言葉がいつも以上に胸に刺さった。
何回言われても慣れることはなく、やっぱり胸は痛むのだ。
「おいっ、何か反応したらどうだ! つまらん女だな!」
「……申し訳ございません。セドリック殿下には、感謝しております」
セドリックに感謝などしたくないが、この場を穏便に済ませるにはセドリックに従うのが一番だと思い、カトリーヌは頭を下げた。
しかし、セドリックはそんなカトリーヌの態度も気に入らなかったらしい。
「ふんっ、本当につまらん女だ」
セドリックがカップを手にする音が聞こえ、すぐに名前を呼ばれた。
「カトリーヌ、顔を上げろ」
いつもは呼ばれない名前を呼ばれたことに嫌な予感を覚えつつ顔を上げると、そこにはニヤニヤと笑うセドリックがいた。
「はい。なんでしょ……っ」
返事を待たずに、セドリックはカップの中に入っていたお茶をカトリーヌの顔にぶちまけた。
バシャッと、顔からお茶が滴り落ちる。
せっかくのドレスもびしょ濡れになってしまった。濡れたドレスが体にまとわりつく感触に、カトリーヌは辛く惨めな気持ちになる。
「ああ、手が滑った。すまないな。あまりの不味さに体が震えたのだ。カップも私には似合わん。もっと使用人の教育を徹底すべきではないか? これでは王妃となってからが思いやられるな。満足に茶も淹れられない使用人など使い物にならんぞ」
その言葉に、カトリーヌは強い怒りを覚えた。
自分が馬鹿にされるのはまだいいのだ。しかし、熱心に働いてくれている使用人たちを馬鹿にされるのは我慢できなかった。
ただ他人に対して怒るということに慣れていないカトリーヌは、怒りを表現することが苦手だ。さらにセドリックに対して、今怒りを露わにするのは得策ではなかった。
セドリックの憂さ晴らしのためだけに馬鹿にされた使用人たちには本当に申し訳なく、カトリーヌは泣きそうになりながら頭を下げる。
「……申し訳ございませんでした。教育を徹底いたします」
「そんな軽い謝罪で済まされると思ってるのか? お前の使用人が王子である俺に不敬を働いたんだぞ?」
ソファーに腰掛けたまま頭を下げたカトリーヌが気に食わなかったのだろう。セドリックの更なる要求に、カトリーヌはソファーから降りて跪いた。
「大変、申し訳ございませんでした」
「ふんっ、貴族令嬢のくせして惨めなやつだな。やはり私には到底釣り合わん。何度も言っているが、もう少し私に釣り合うように努力をしておけ」
カトリーヌに向かってそう命じたセドリックは、やっと満足したのかソファーから立ち上がる。カトリーヌが見送ろうと立ち上がると、セドリックにギロリと睨まれた。
「そのような汚い姿で私の隣に並ぼうと思っているのか? 想像するだけで寒気がする。茶を入れる者だけでなく、化粧や服飾担当もクビにしておけ」
カトリーヌの見た目が崩れているのはセドリックが茶を掛けたからだ。それを棚に上げてメイドたちのせいにするセドリックに、カトリーヌは怒りや申し訳なさでいっぱいになる。
少し潤んでしまった瞳に気づかれないよう、深く頭を下げた。
(わたしのせいで、ごめんなさい……)
使用人たちに心の中で謝りながら、セドリックに答える。
「……指導徹底いたします」
頭を下げるカトリーヌの髪の毛から、水滴が落ちた。
その惨めな姿に溜飲が下がったのか、セドリックはそれ以上口を開くことなく部屋を出ていく。
セドリックがエントランスに向かい、無事に馬車で屋敷を出たと報告が来たところで、やっとカトリーヌは下げていた頭を上げた。
ノックをしてから中に入ると、そこには横柄な態度で侯爵家のメイドたちに奉仕をさせているセドリックがいる。立場的に断れないのをいいことに、隣に座らせたりマッサージをさせたりとやりたい放題だ。
「殿下、大変お待たせいたしました。皆、ありがとう。もう下がって大丈夫よ」
まずはとにかくメイドたちを助けようとカトリーヌが緊張しながら声をかけると、セドリックが不満げな顔を見せる。
「おい、なぜお前が勝手にメイドを下がらせるんだ?」
侯爵家のメイドなのだから当然であるが、セドリックの思考は国のものは全て俺のものである。
そんなセドリックに正論は通じないとカトリーヌは理解しているため、嫌がる自分の心を必死に押さえつけて、震えそうな唇を噛み締めてから口を開いた。
「そこは、わたしの場所ではないのでしょうか」
カトリーヌは自らのことは簡単に犠牲にするが、他人には優しく、他人のための方が勇気を出せるのだ。こうした方がコレットの作戦が上手くいくだろうという、少しの打算もあった。
しかし、どうしても僅かに手が震えるのは押さえられていない。
「ははっ、なんだ? お前が嫉妬か?」
セドリックは珍しいカトリーヌに夢中で、震えには気づいてないようだ。加虐的な笑みを浮かべて、カトリーヌを舐めるように見つめている。
「私に説教ばかりで全く可愛げがないつまらん女だと思っていたが、少しはそういうこともできるのではないか」
楽しげにそう言ったセドリックは、メイドたちを解放した。それにカトリーヌは内心で安堵したが、同時に焦りも覚える。
変に今までとは違うカトリーヌの姿を見せることで、セドリックが面白がって婚約を破棄したいという気持ちを持たなくなったら困るのだ。
絶対にコレットの邪魔だけは避けなければならない。
「婚約者以外の者と触れ合いすぎるのは、殿下の外聞に悪いですから」
いつも通りを意識して言葉を付け足すと、セドリックの顔には強い不満が浮かんだ。
「余計なことを言わなければいいものを。だからお前は誰からも好かれないんだ。本当に可愛くない女だな」
吐き捨てるようにそう告げると、すぐに何を思ったのかニヤッといやらしい笑みを浮かべた。
向かいのソファーを示し、偉そうに口を開く。
「そこに座ることを許可してやる」
素直に従ってカトリーヌが腰掛けると、セドリックはソファーの背もたれに踏ん反り返ったまま言った。
「今日私がここに来たのは、お前が浮気をしてるんじゃないかって噂を耳にしたからだ。まさか王妃になろうって女が他の男と浮気! そんなわけ、ないよなぁ〜?」
カトリーヌのことを責められるのが心底楽しいのか、セドリックはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。カトリーヌはやはりその話かと緊張しつつ、動揺を悟られないように気を引き締めた。
「なんのことだか、全く分からないのですが……」
「はっ、とぼけても無駄だ! こっちは確かな筋から情報を得てるんだぞ!」
「それは、どのような情報でしょうか」
「黒髪の男が屋敷に入って出てこないと聞いている。歳はお前より少し上ぐらい。お前の兄弟に黒髪はいないだろ? 浮気などするやつは王妃に全く相応しくない! 生まれた子供がどこの穢れた血を継いでるか分かったもんじゃないからな!」
怒りや蔑みを滲ませながら、勝ち誇ったように告げたセドリックに、カトリーヌは努めて冷静に答えた。
「黒髪のお方でしたら、おそらくお父様のご友人だと思われます。先日から屋敷に滞在しておられるのです」
「は?」
予想外な言葉が返ってきたのか、間抜けな声を上げたセドリックにカトリーヌは畳み掛ける。
「お父様とお客様は歳が離れておりますが、それは貴族の間では珍しいことではないでしょう。たまたま街で出会い、趣味で意気投合したと聞いております」
澱みないカトリーヌの反論に、セドリックは顔を怒りで赤くした。
そして無駄に立ち上がると、大声で怒鳴る。
「私に嘘をつくとは何事だ⁉︎」
これはセドリックが己の不利を察するとやる癖だ。おそらくカトリーヌが浮気をしているかもしれないという話に、碌な確認もせずに飛びついたのだろう。
貴族の浮気を追求するならば、証拠を集めて証人も準備しなければいけない。それこそ二人で寝室に入る様子の目撃者を多数準備したり、夜を共に過ごしたベッドのシーツを手に入れたり、普通はそこまでやるものだ。
「嘘ではございません」
カトリーヌはそう答えながら、これならコレットの作戦も上手くいくかもしれない。そんな期待を抱いていた。
「くっ……わ、私を誤解させたお前が悪いんだぞ⁉︎」
セドリックは浮気を追求するのは無理だと悟ったのか、こじつけのような怒りをカトリーヌに向ける。
「それについては、大変申し訳なく思っております。お父様にもお伝えしておきます」
ここは頭を下げるべきところだとカトリーヌが謝罪をすると、セドリックはやっと自分が優位に立てたと思ったようで、またソファーに座り直すと横柄に踏ん反り返った。
「ふんっ、分かってるならいい」
セドリックの中でカトリーヌが浮気をしているという話はなくなったようで、カトリーヌは心から安堵する。
(なんとか問題なく帰っていただけるかしら……)
そんな希望を抱いたところで、セドリックがカトリーヌに見下す視線を向けて言った。
「お前は身分だけしか取り柄がない女なんだ。それをはっきり自覚して、せめて私に迷惑をかけないようにしろ。社交は満足にできない、笑顔もない、可愛くもない、女らしい魅力もない、全くいいところがないくせに、そこに魔道具作りとかいう下賤の趣味まで持っている。私がお前と婚約してやってることに、もっと感謝すべきじゃないか?」
今まで何度も言われてきたことだが、エルベルトと過ごす時間があまりにも楽しすぎたからか、セドリックの言葉がいつも以上に胸に刺さった。
何回言われても慣れることはなく、やっぱり胸は痛むのだ。
「おいっ、何か反応したらどうだ! つまらん女だな!」
「……申し訳ございません。セドリック殿下には、感謝しております」
セドリックに感謝などしたくないが、この場を穏便に済ませるにはセドリックに従うのが一番だと思い、カトリーヌは頭を下げた。
しかし、セドリックはそんなカトリーヌの態度も気に入らなかったらしい。
「ふんっ、本当につまらん女だ」
セドリックがカップを手にする音が聞こえ、すぐに名前を呼ばれた。
「カトリーヌ、顔を上げろ」
いつもは呼ばれない名前を呼ばれたことに嫌な予感を覚えつつ顔を上げると、そこにはニヤニヤと笑うセドリックがいた。
「はい。なんでしょ……っ」
返事を待たずに、セドリックはカップの中に入っていたお茶をカトリーヌの顔にぶちまけた。
バシャッと、顔からお茶が滴り落ちる。
せっかくのドレスもびしょ濡れになってしまった。濡れたドレスが体にまとわりつく感触に、カトリーヌは辛く惨めな気持ちになる。
「ああ、手が滑った。すまないな。あまりの不味さに体が震えたのだ。カップも私には似合わん。もっと使用人の教育を徹底すべきではないか? これでは王妃となってからが思いやられるな。満足に茶も淹れられない使用人など使い物にならんぞ」
その言葉に、カトリーヌは強い怒りを覚えた。
自分が馬鹿にされるのはまだいいのだ。しかし、熱心に働いてくれている使用人たちを馬鹿にされるのは我慢できなかった。
ただ他人に対して怒るということに慣れていないカトリーヌは、怒りを表現することが苦手だ。さらにセドリックに対して、今怒りを露わにするのは得策ではなかった。
セドリックの憂さ晴らしのためだけに馬鹿にされた使用人たちには本当に申し訳なく、カトリーヌは泣きそうになりながら頭を下げる。
「……申し訳ございませんでした。教育を徹底いたします」
「そんな軽い謝罪で済まされると思ってるのか? お前の使用人が王子である俺に不敬を働いたんだぞ?」
ソファーに腰掛けたまま頭を下げたカトリーヌが気に食わなかったのだろう。セドリックの更なる要求に、カトリーヌはソファーから降りて跪いた。
「大変、申し訳ございませんでした」
「ふんっ、貴族令嬢のくせして惨めなやつだな。やはり私には到底釣り合わん。何度も言っているが、もう少し私に釣り合うように努力をしておけ」
カトリーヌに向かってそう命じたセドリックは、やっと満足したのかソファーから立ち上がる。カトリーヌが見送ろうと立ち上がると、セドリックにギロリと睨まれた。
「そのような汚い姿で私の隣に並ぼうと思っているのか? 想像するだけで寒気がする。茶を入れる者だけでなく、化粧や服飾担当もクビにしておけ」
カトリーヌの見た目が崩れているのはセドリックが茶を掛けたからだ。それを棚に上げてメイドたちのせいにするセドリックに、カトリーヌは怒りや申し訳なさでいっぱいになる。
少し潤んでしまった瞳に気づかれないよう、深く頭を下げた。
(わたしのせいで、ごめんなさい……)
使用人たちに心の中で謝りながら、セドリックに答える。
「……指導徹底いたします」
頭を下げるカトリーヌの髪の毛から、水滴が落ちた。
その惨めな姿に溜飲が下がったのか、セドリックはそれ以上口を開くことなく部屋を出ていく。
セドリックがエントランスに向かい、無事に馬車で屋敷を出たと報告が来たところで、やっとカトリーヌは下げていた頭を上げた。