愚かな婚約者様、あなたの"浮気相手"は私の味方ですよ? 〜手を組んだ2人の才女による華麗なる制裁〜
26、パーティー当日
セドリックがカトリーヌへ婚約破棄を突きつけようと目論むパーティーの当日。カトリーヌはセドリックの婚約者としてパーティーに出席するため、朝早くから王城に入っていた。
身支度を整えて参加している貴族や、その貴族の客人などの情報を覚えていく。
これは毎回カトリーヌがやっていることだ。セドリックは一度も覚えようとしたことなどなく、パーティーが始まるまで別の女とイチャイチャしていることまであった。今回はおそらくカトリーヌに婚約破棄を突きつけるための準備などをしているのだろう。
と、思っていたら、カトリーヌの下に珍しくセドリックが顔を見せた。
「おい」
「……セドリック殿下、いかがいたしましたか?」
立ち上がってから振り返ったカトリーヌに、セドリックはニヤニヤとした笑みを向ける。これから婚約破棄を突きつけることを考えて、優越感にでも浸っているのだろう。
カトリーヌは絶対に不信感を持たれてはいけないと、かなり緊張していた。いつも通りを意識して顔を俯けたが、本当にいつも通りの態度ができているかは定かではない。
「ふんっ、やっぱりお前は可愛げがないな」
しかしセドリックがいつものようにそう言ったので、カトリーヌは少しだけ安堵した。
「今日は父上も参加されるぞ」
「存じております」
「必死に媚を売らなきゃな。何せ私たちの婚約は父上の意向がなければとっくに破棄されてるものだ。お前は私と婚約してたいんだろ?」
カトリーヌはセドリックとの婚約に前向きな態度を示したことはなく、貴族の義務として向き合ってきたのだが、セドリックの中ではカトリーヌが婚約を望んでいることになっているようだ。
カトリーヌがコレットに嫌がらせをしたと思っているからかもしれない。
「陛下のご意向に従います」
普段と同じ答えを返すと、セドリックはニンマリと恐怖を覚えるほどの笑みを浮かべた。
「意向に背くことにならなきゃいいなぁ〜」
婚約破棄を突きつける時のことを考えているのか、今までにないほど楽しげだ。
「魔道具製作なんて下賤な趣味を持つお前は、私じゃなかったら受け入れられる男などいないだろう。私に捨てられたら、お前は誰とも縁を結べないかもしれないなぁ?」
心底カトリーヌを馬鹿にしているセドリックだ。
カトリーヌは気にする必要はないと分かっているが、セドリックとの婚約破棄には前向きになったカトリーヌも、自分に魅力があるとは思っておらず、セドリックの言葉も間違いではないと思ってしまう。
それと同時にエルベルトと結ばれる未来も絶対にやってこないと改めて感じ、カトリーヌは無意識に少し視線を下げた。
そんなカトリーヌに、セドリックはニヤニヤと笑っている。
「私に捨てられたら悲惨だろうなぁ。それは、捨てられたくないだろうな」
それからもカトリーヌがセドリックの蔑みに耐えていると、パーティーの開始時刻が迫ってきたようだ。セドリックの側近が呼びにきて、会場に向かうことになった。
その段階になって、カトリーヌは自分がかなり緊張しているのを改めて自覚する。
ここまで上手く進んできた作戦を壊さないためには、カトリーヌの動きも大切なのだ。とにかくカトリーヌは違和感を持たれてはいけない。普段通りを装うのだ。
「会場に行くぞ。お前のようなハズレを隣に置いてやる私に感謝するんだな」
「……かしこまりました」
会場の入り口に向かった二人は、入り口の手前で初めて距離を近づける。一応セドリックも、国王が参加するような正式なパーティーの場でのみ、カトリーヌをエスコートするのだ。
とはいえ、優しさのかけらもないエスコートだが。
「少しでも私に迷惑をかけるなよ」
ジロッと睨みながら言い捨てたセドリックは、カトリーヌの歩幅に合わせることなく扉の向こうに行ってしまった。そんなセドリックを、カトリーヌは慌ててエスコートされているように見せながら追いかける。
二人が会場に入ると、大きな拍手が湧き起こった。
「殿下にとっくに愛想を尽かされてるのに、まだ隣にいるのね」
「釣り合っていないのだから、自分から婚約者の座を降りればいいものを」
セドリックの隣を狙う令嬢たちの声が耳に届いたが、カトリーヌは少し視線を落として意識的に聞かないようにする。カトリーヌは元々華やかな場所が得意ではなかったが、セドリックの婚約者として誹謗中傷を受けるようになってからは、より苦手になっていた。
さらに今回は作戦のこともあって緊張しているため、いつも以上に落ち着かない心地だ。
「おい、早く歩け」
僅かに遅れそうになったカトリーヌにセドリックがそう告げた瞬間、カトリーヌの視界にコルディエ侯爵とエルベルトが映った。セドリックのことを睨みつけるように見ている二人の様子に、カトリーヌは緊張が一気に解れていくのを感じる。
(そんなに見てしまったら、セドリック殿下に不審がられないかしら)
そう思いつつも、なんだか嬉しかった。
軽くなった足取りで、会場の前方にある王族用のテーブルに向かう。カトリーヌとセドリックが所定の位置についたところで、最後に会場へと姿を表すのは国王夫妻だ。
鋭い眼差しの国王が、王妃を伴って会場に入ってきた。
二人は一般の貴族とも、カトリーヌたちが出入りした前方の入り口とも違う、会場にある壇上の扉から姿を表す。全員が拍手で出迎える中、国王が片手を上げて拍手を止めると、よく通る声で告げた。
身支度を整えて参加している貴族や、その貴族の客人などの情報を覚えていく。
これは毎回カトリーヌがやっていることだ。セドリックは一度も覚えようとしたことなどなく、パーティーが始まるまで別の女とイチャイチャしていることまであった。今回はおそらくカトリーヌに婚約破棄を突きつけるための準備などをしているのだろう。
と、思っていたら、カトリーヌの下に珍しくセドリックが顔を見せた。
「おい」
「……セドリック殿下、いかがいたしましたか?」
立ち上がってから振り返ったカトリーヌに、セドリックはニヤニヤとした笑みを向ける。これから婚約破棄を突きつけることを考えて、優越感にでも浸っているのだろう。
カトリーヌは絶対に不信感を持たれてはいけないと、かなり緊張していた。いつも通りを意識して顔を俯けたが、本当にいつも通りの態度ができているかは定かではない。
「ふんっ、やっぱりお前は可愛げがないな」
しかしセドリックがいつものようにそう言ったので、カトリーヌは少しだけ安堵した。
「今日は父上も参加されるぞ」
「存じております」
「必死に媚を売らなきゃな。何せ私たちの婚約は父上の意向がなければとっくに破棄されてるものだ。お前は私と婚約してたいんだろ?」
カトリーヌはセドリックとの婚約に前向きな態度を示したことはなく、貴族の義務として向き合ってきたのだが、セドリックの中ではカトリーヌが婚約を望んでいることになっているようだ。
カトリーヌがコレットに嫌がらせをしたと思っているからかもしれない。
「陛下のご意向に従います」
普段と同じ答えを返すと、セドリックはニンマリと恐怖を覚えるほどの笑みを浮かべた。
「意向に背くことにならなきゃいいなぁ〜」
婚約破棄を突きつける時のことを考えているのか、今までにないほど楽しげだ。
「魔道具製作なんて下賤な趣味を持つお前は、私じゃなかったら受け入れられる男などいないだろう。私に捨てられたら、お前は誰とも縁を結べないかもしれないなぁ?」
心底カトリーヌを馬鹿にしているセドリックだ。
カトリーヌは気にする必要はないと分かっているが、セドリックとの婚約破棄には前向きになったカトリーヌも、自分に魅力があるとは思っておらず、セドリックの言葉も間違いではないと思ってしまう。
それと同時にエルベルトと結ばれる未来も絶対にやってこないと改めて感じ、カトリーヌは無意識に少し視線を下げた。
そんなカトリーヌに、セドリックはニヤニヤと笑っている。
「私に捨てられたら悲惨だろうなぁ。それは、捨てられたくないだろうな」
それからもカトリーヌがセドリックの蔑みに耐えていると、パーティーの開始時刻が迫ってきたようだ。セドリックの側近が呼びにきて、会場に向かうことになった。
その段階になって、カトリーヌは自分がかなり緊張しているのを改めて自覚する。
ここまで上手く進んできた作戦を壊さないためには、カトリーヌの動きも大切なのだ。とにかくカトリーヌは違和感を持たれてはいけない。普段通りを装うのだ。
「会場に行くぞ。お前のようなハズレを隣に置いてやる私に感謝するんだな」
「……かしこまりました」
会場の入り口に向かった二人は、入り口の手前で初めて距離を近づける。一応セドリックも、国王が参加するような正式なパーティーの場でのみ、カトリーヌをエスコートするのだ。
とはいえ、優しさのかけらもないエスコートだが。
「少しでも私に迷惑をかけるなよ」
ジロッと睨みながら言い捨てたセドリックは、カトリーヌの歩幅に合わせることなく扉の向こうに行ってしまった。そんなセドリックを、カトリーヌは慌ててエスコートされているように見せながら追いかける。
二人が会場に入ると、大きな拍手が湧き起こった。
「殿下にとっくに愛想を尽かされてるのに、まだ隣にいるのね」
「釣り合っていないのだから、自分から婚約者の座を降りればいいものを」
セドリックの隣を狙う令嬢たちの声が耳に届いたが、カトリーヌは少し視線を落として意識的に聞かないようにする。カトリーヌは元々華やかな場所が得意ではなかったが、セドリックの婚約者として誹謗中傷を受けるようになってからは、より苦手になっていた。
さらに今回は作戦のこともあって緊張しているため、いつも以上に落ち着かない心地だ。
「おい、早く歩け」
僅かに遅れそうになったカトリーヌにセドリックがそう告げた瞬間、カトリーヌの視界にコルディエ侯爵とエルベルトが映った。セドリックのことを睨みつけるように見ている二人の様子に、カトリーヌは緊張が一気に解れていくのを感じる。
(そんなに見てしまったら、セドリック殿下に不審がられないかしら)
そう思いつつも、なんだか嬉しかった。
軽くなった足取りで、会場の前方にある王族用のテーブルに向かう。カトリーヌとセドリックが所定の位置についたところで、最後に会場へと姿を表すのは国王夫妻だ。
鋭い眼差しの国王が、王妃を伴って会場に入ってきた。
二人は一般の貴族とも、カトリーヌたちが出入りした前方の入り口とも違う、会場にある壇上の扉から姿を表す。全員が拍手で出迎える中、国王が片手を上げて拍手を止めると、よく通る声で告げた。