愚かな婚約者様、あなたの"浮気相手"は私の味方ですよ? 〜手を組んだ2人の才女による華麗なる制裁〜
38、驚きの話と次の行き先
「騒ぎになってると思ったら、カトリーヌたちがいたんだね」
「はい。ライアさんが魔道具を試していて、それに皆さんが集まって」
「え、どういう魔道具? 興味ある!」
ライアとエルベルトは他の人と話すのに忙しそうだったので、カトリーヌは少し持っていた魔道具の素材などを使って、ナーヴァルにライアが試している魔道具の説明をした。全てを聞いたナーヴァルはとても楽しそうだ。
「凄いね! 人間はやっぱり技術力が凄いや。僕さ、ご飯とかも人間の国の方が美味しいと思うんだよね」
「そうなのでしょうか」
「もちろんここにも美味しいものはあるよ? でもさ、何日も煮込んで肉を柔らかくした料理とかあるじゃん。竜族は魔法で簡単に作りすぎて、そういうのないからさ〜」
料理も魔法でするのが当たり前であるため、長時間かけて作る料理が発展しなかったのかもしれない。
「ナーヴァル様は人間の国によく行かれるのですか?」
「たまに行くよ! 僕好きなんだよね。人がいっぱいいてさ」
ナーヴァルとの会話をカトリーヌが楽しんでいると、急に後ろからぐいっと腰を抱かれて引き寄せられた。それに驚き目を見開くと、後ろから声が聞こえる。
「ナーヴァル、カトリーヌとの距離が近いぞ。竜族は基本的に力が強いのだから、怖がらせないように気をつけろ」
「はいはーい。でもエルベルトの方がめっちゃ近いけどね」
揶揄うようにそう言ったナーヴァルに、エルベルトは自らの腕を見下ろして、カトリーヌの腰を抱いているのを確認した。
今気づいたというような顔をしている。もしかしたら、完全に無意識でやっていたのかもしれない。
「……すまない」
そう言ってカトリーヌから少し距離を取ったエルベルトに、カトリーヌは慌てて振り向いた。
「いえ、大丈夫です。その、竜族の皆様のことは怖くありませんし、エルベルト様は特に移動時のこともありますので……」
離れてしまったことが寂しかったカトリーヌは、ついそんなことを言ってしまう。まるで近くにいて欲しいと言わんばかりのセリフだと自分で気づき、顔が赤くなった。
そんな二人のやりとりをニコニコ、いや、ニヤニヤと見ていたナーヴァルは、別の者たちと話していたライアが上に飛んだのを見て歓声を上げた。
「おお、凄いね」
それによってカトリーヌとエルベルトの視線もライアに向かう。楽しそうなライアに安心していると、ナーヴァルが何気なく言った。
「ねぇ、これはさすがに長に報告しておいた方がいいんじゃない? ライアだけじゃなくてエルベルトも使ってるんでしょ? カトリーヌから、魔力を使ってるって聞いたし」
ナーヴァルの忠告を受けて、カトリーヌは初めて魔力を魔道具に使ってはいけない可能性に思い至った。エルベルトが普通に協力してくれたため考えていなかったが、エルベルトよりも上の存在はいるのだ。
「確かに報告しておくべきか」
エルベルトが叱られないだろうか。魔力の使用を認めてもらえるのか。カトリーヌが不安でいっぱいになっていると、ナーヴァルが脈絡のないことを口にする。
「せっかくだから実家にカトリーヌを紹介すれば? その方がこれから色々とスムーズだって」
「それも一理あるか……」
二人の会話はそれからも続いていたが、カトリーヌの耳には入っていなかった。集落の長に報告すべきという話から、エルベルトの実家に話が飛んだ理由が分からなかったのだ。
しかし、次第にその理由に思い当たる。緊張しつつエルベルトに確認すると――。
「あの、エルベルト様って、もしかして、長の……」
その問いかけを聞いたエルベルトは、少しだけ迷うように頬を掻いてから頷いた。
「ああ、集落の長は俺の父親だ。伝えていなくてすまない。言ったらカトリーヌが気にするかと思い、タイミングを逃してしまって……」
申し訳なさそうに告げるエルベルトだったが、カトリーヌは衝撃でそれどころではない。
竜族と言うだけでも畏れ多いのに、その中のトップである長の息子。つまり人間の国に例えるなら王子ということだ。
「ま、まさかそんなお立場だとは知らず……」
貴族令嬢としての癖で頭を下げようとすると、エルベルトに肩を掴まれて止められた。
「いや、全く気にする必要はない。竜族の長なんて、ただの肩書きだ。別に特別な立場というわけではない。それに俺は長の立場を継がないからな。兄が継ぐんだ」
その説明を受けて、カトリーヌは少し冷静さを取り戻した。
よく考えたら竜族というだけで神に近い立場なのだ。そんな立場の中での上下は、ただの人間であるカトリーヌにはあまり関係がないのかもしれない。
しかしそれは、カトリーヌとエルベルトに大きな身分の違いがあるということを意味する。
(やはりエルベルト様は、遠い人なのよ)
その事実に切なくなりつつ、カトリーヌは笑顔で頷いた。
「かしこまりました。では、謝罪はやめておきます」
「そうしてほしい。それよりも、長に報告しても大丈夫か? 報告の場にはカトリーヌにもいてほしいのだが」
エルベルトからの頼みに、カトリーヌは覚悟を決める。
いつかは報告しなければいけないのだ。先延ばしにしても意味はない。
「もちろんです。今からでも問題ありません」
返答を聞いてからエルベルトがライアに確認をすると、ライアも今から実家に向かうので大丈夫だと答えた。そこで三人は、家に戻るのではなく集落の長の家、エルベルトとライアの実家に向かうことになる。
「では行こう」
「はい」
「私が先頭を行くね!」
集まっていた皆と別れた三人は、ライアを先頭に実家を目指した。
「はい。ライアさんが魔道具を試していて、それに皆さんが集まって」
「え、どういう魔道具? 興味ある!」
ライアとエルベルトは他の人と話すのに忙しそうだったので、カトリーヌは少し持っていた魔道具の素材などを使って、ナーヴァルにライアが試している魔道具の説明をした。全てを聞いたナーヴァルはとても楽しそうだ。
「凄いね! 人間はやっぱり技術力が凄いや。僕さ、ご飯とかも人間の国の方が美味しいと思うんだよね」
「そうなのでしょうか」
「もちろんここにも美味しいものはあるよ? でもさ、何日も煮込んで肉を柔らかくした料理とかあるじゃん。竜族は魔法で簡単に作りすぎて、そういうのないからさ〜」
料理も魔法でするのが当たり前であるため、長時間かけて作る料理が発展しなかったのかもしれない。
「ナーヴァル様は人間の国によく行かれるのですか?」
「たまに行くよ! 僕好きなんだよね。人がいっぱいいてさ」
ナーヴァルとの会話をカトリーヌが楽しんでいると、急に後ろからぐいっと腰を抱かれて引き寄せられた。それに驚き目を見開くと、後ろから声が聞こえる。
「ナーヴァル、カトリーヌとの距離が近いぞ。竜族は基本的に力が強いのだから、怖がらせないように気をつけろ」
「はいはーい。でもエルベルトの方がめっちゃ近いけどね」
揶揄うようにそう言ったナーヴァルに、エルベルトは自らの腕を見下ろして、カトリーヌの腰を抱いているのを確認した。
今気づいたというような顔をしている。もしかしたら、完全に無意識でやっていたのかもしれない。
「……すまない」
そう言ってカトリーヌから少し距離を取ったエルベルトに、カトリーヌは慌てて振り向いた。
「いえ、大丈夫です。その、竜族の皆様のことは怖くありませんし、エルベルト様は特に移動時のこともありますので……」
離れてしまったことが寂しかったカトリーヌは、ついそんなことを言ってしまう。まるで近くにいて欲しいと言わんばかりのセリフだと自分で気づき、顔が赤くなった。
そんな二人のやりとりをニコニコ、いや、ニヤニヤと見ていたナーヴァルは、別の者たちと話していたライアが上に飛んだのを見て歓声を上げた。
「おお、凄いね」
それによってカトリーヌとエルベルトの視線もライアに向かう。楽しそうなライアに安心していると、ナーヴァルが何気なく言った。
「ねぇ、これはさすがに長に報告しておいた方がいいんじゃない? ライアだけじゃなくてエルベルトも使ってるんでしょ? カトリーヌから、魔力を使ってるって聞いたし」
ナーヴァルの忠告を受けて、カトリーヌは初めて魔力を魔道具に使ってはいけない可能性に思い至った。エルベルトが普通に協力してくれたため考えていなかったが、エルベルトよりも上の存在はいるのだ。
「確かに報告しておくべきか」
エルベルトが叱られないだろうか。魔力の使用を認めてもらえるのか。カトリーヌが不安でいっぱいになっていると、ナーヴァルが脈絡のないことを口にする。
「せっかくだから実家にカトリーヌを紹介すれば? その方がこれから色々とスムーズだって」
「それも一理あるか……」
二人の会話はそれからも続いていたが、カトリーヌの耳には入っていなかった。集落の長に報告すべきという話から、エルベルトの実家に話が飛んだ理由が分からなかったのだ。
しかし、次第にその理由に思い当たる。緊張しつつエルベルトに確認すると――。
「あの、エルベルト様って、もしかして、長の……」
その問いかけを聞いたエルベルトは、少しだけ迷うように頬を掻いてから頷いた。
「ああ、集落の長は俺の父親だ。伝えていなくてすまない。言ったらカトリーヌが気にするかと思い、タイミングを逃してしまって……」
申し訳なさそうに告げるエルベルトだったが、カトリーヌは衝撃でそれどころではない。
竜族と言うだけでも畏れ多いのに、その中のトップである長の息子。つまり人間の国に例えるなら王子ということだ。
「ま、まさかそんなお立場だとは知らず……」
貴族令嬢としての癖で頭を下げようとすると、エルベルトに肩を掴まれて止められた。
「いや、全く気にする必要はない。竜族の長なんて、ただの肩書きだ。別に特別な立場というわけではない。それに俺は長の立場を継がないからな。兄が継ぐんだ」
その説明を受けて、カトリーヌは少し冷静さを取り戻した。
よく考えたら竜族というだけで神に近い立場なのだ。そんな立場の中での上下は、ただの人間であるカトリーヌにはあまり関係がないのかもしれない。
しかしそれは、カトリーヌとエルベルトに大きな身分の違いがあるということを意味する。
(やはりエルベルト様は、遠い人なのよ)
その事実に切なくなりつつ、カトリーヌは笑顔で頷いた。
「かしこまりました。では、謝罪はやめておきます」
「そうしてほしい。それよりも、長に報告しても大丈夫か? 報告の場にはカトリーヌにもいてほしいのだが」
エルベルトからの頼みに、カトリーヌは覚悟を決める。
いつかは報告しなければいけないのだ。先延ばしにしても意味はない。
「もちろんです。今からでも問題ありません」
返答を聞いてからエルベルトがライアに確認をすると、ライアも今から実家に向かうので大丈夫だと答えた。そこで三人は、家に戻るのではなく集落の長の家、エルベルトとライアの実家に向かうことになる。
「では行こう」
「はい」
「私が先頭を行くね!」
集まっていた皆と別れた三人は、ライアを先頭に実家を目指した。