愚かな婚約者様、あなたの"浮気相手"は私の味方ですよ? 〜手を組んだ2人の才女による華麗なる制裁〜

5、侯爵の帰宅

 話が一旦まとまったところでまたお茶を口に運び、少し休んでからコレットが話の続きをする。

「私とカトリーヌが親友なことってほとんどの人に知られてないけど、一応作戦を決行している時は、会う時に気をつけたほうがいいかもしれないわね。何かを勘繰られたり怪しまれて、作戦が失敗するのは避けたいわ」

 二人はあまりにも性格や雰囲気が違うせいか、仲が良いことを周囲に認識されていないのだ。

 今回はそれが功を奏す。

「そうしましょう。特にセドリック殿下には知られないように」
「そうね。今は知らないのよね?」
「ええ、わたしに興味がないから」

 確かにセドリックはカトリーヌに対する興味は薄いが、一応婚約者なのでその情報は側近などから詳細を渡されている。しかしセドリックは、その中からカトリーヌを蔑んだり馬鹿にできるものだけを覚えているため、カトリーヌの友人などを覚えているはずもないのだ。

「それにはイラッとするけれど、知らないならいいわ。あとは侯爵様に相談するだけかしら」

 コレットのその言葉を聞いて、カトリーヌは最初にコレットが急いでいたことを思い出した。

「作戦の相談をするために、お父様の帰宅までに話を終わらせたかったのね」
「そうよ。絶対にカトリーヌには頷いてもらうつもりでいたもの」

 ペロッと舌を出すコレットに、カトリーヌは苦笑を浮かべてしまう。

「コレットには勝てないわ」
「何言ってるのよ。それはこっちのセリフよ。カトリーヌは凄いわ」

 それからも二人で楽しく話をしていると、使用人によってコルディエ侯爵の帰還が伝えられた。

 二人は茶会室を出て、屋敷のエントランスに向かう。そこにはもちろんカトリーヌの母親もいて、三人で侯爵を出迎えた。

「あなた、お帰りなさいませ」

 侯爵夫人の声かけに、侯爵は分かりやすく頬を緩める。この二人は、貴族社会の中では仲睦まじい夫婦として有名だ。

 一通り二人で話をしてから、侯爵はカトリーヌとコレットに視線を向けた。

「お父様、お帰りなさいませ」
「侯爵様、お邪魔しております」
「ただいま帰った。コレットはよく来たな。こちらに来ているということは、何か話があるのだろうか」

 理解が早い侯爵に、コレットは告げる。

「はい。聞いてほしいことがあります」
「分かった。では第一応接室で待っているように」
「ありがとうございます」

 カトリーヌとコレットは、今度は応接室に向かった。
 侯爵は外出着から少しラフな室内着に着替え、応接室に顔を出す。三人の雰囲気はとても和やかだった。

「奥様は来られないのですか?」
「あいつは少しやることがあるらしい。後で話を聞かせてくれと言われた。……そんなことよりも、なぜそこまで着飾っているのだ?」

 まだパーティードレスのままである二人に、侯爵は首を傾げる。

 コレットはすでに侯爵家に慣れているため、この屋敷に来るためだけにここまで着飾ることはないのだ。

「実は、そこから今回の話に繋がるのです」

 それからは主にコレットが中心となって、作戦の内容を伝えた。

 噂やカトリーヌがやんわりと伝えていたセドリックの所業は聞いていた侯爵だが、怒っているコレットから直接聞くと伝わる空気感が違うようで、途中から怒りを全身から滲ませている。

 基本的には温厚な侯爵だが、ガタイがよく体が大きいため、怒ると威圧感が凄かった。

「まさか、そこまでとは……!」
「あの馬鹿王子は失脚させるのが、カトリーヌのためであり国のためです。そこで先ほど説明した作戦を実行したいのですが、構いませんか?」

 コレットの問いかけに、侯爵は居住まいを正すと――頭を下げた。

「コレット、本当にありがとう。君がカトリーヌの親友で良かった。君には負担をかけるが、作戦の決行を頼みたい。私にできることならなんでも助力しよう。言ってくれ。作戦後の婚約者問題が発生したら、私が責任持って最良の縁を見つける」

 侯爵からのその言葉に、コレットは嬉しそうな笑みを浮かべた。

「侯爵様、ありがとうございます!」

 侯爵はそんなコレットから、今度はカトリーヌに視線を移した。

「カトリーヌ、お前には辛い思いをさせてしまい、本当にすまなかった。もっと早く婚約破棄に向けて私が動くべきだったし、そもそも最初から断っておけば……」

 その謝罪に、カトリーヌは慌てて口を開く。

「いえっ、婚約打診を受けてほしいと伝えたのはわたしですし、婚約破棄のために動いてくださるというお父様の言葉に、首を横に振っていたのもわたしです」
「しかし、それはカトリーヌがこの家を想っているからこそだろう? やはりカトリーヌだけに辛さを強いるような選択をすべきじゃなかった。……もう随分と遅いが、これからはカトリーヌの幸せのために動きたい。動かせてほしい」

 そう言って頭を下げた侯爵に、カトリーヌは頬を緩めて伝えた。

「お父様、ありがとうございます。そのお言葉をいただけただけでとても嬉しいです。わたしも、これからはもう少し自分を大切にしようと思っております。そのために……お力を貸してくださいますか?」

 カトリーヌの問いかけに、侯爵はガバッと顔を上げた。

「もちろんだ」

 そうしてカトリーヌとコレットは、侯爵という強い味方を得る。

「これであとは、私が作戦を開始するだけね。頑張るわ」
「コレット、本当にありがとう。でも絶対に無理はしないで。ダメそうならまた別の方法を考えましょう」
「もちろんよ」

 それからはまたカトリーヌとコレットの茶会となり、コレットはカトリーヌの家族と夕食を共にしてから実家の伯爵家に帰った。
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