海姫物語
「そんなこと言っても仕方ないでしょ。本当は施設から出るのだってダメなんだから」
姫奈が声を低くして言う。
いつ、どこでこういう会話を聞かれているかわからない。
施設の人たちは決して怖いわけじゃないけれど、それでも用心に越したことはない。
あの抜け穴の存在がバレれば、塞がれてしまうのは目に見えている。
「なぁ、次はいつ海に行く?」
さっき注意したばかりなのにエリクは全く気にしていない様子で身を乗り出して質問してきた。
「そんなの……わからないよ」
姫奈は首を左右に振って答える。
だけど心はそれにひどく惹かれているところがあった。
きっと、自分とエリクならどんな場所へでも行くことができる。
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