海姫物語
それがなければ、素直に施設内にいられたかどうか自信がない。
「でももう終わりだ。抜け穴は使わない」
エリクが懇願するように姫奈を見上げる。
その言葉に答えたい。
だけど、応えられない。
姫奈はキュッと唇を引き結ぶと膝をついているエリクの横を素早く駆け抜けた。
「姫奈!!」
エリクが右腕を伸ばして姫奈の足首をつかもうとするが、寸前のところで空を掴んだ。
エリクが「チッ」と舌打ちをするのが後方に聞こえてくる。
姫奈は乱暴に木板をどかせると大急ぎで外へと脱出したのだった。

☆☆☆

これで3日連続の海だ。
姫奈は無心で浜辺へ向けて泳いでいた。
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