海姫物語
男性の服を着るのはもちろん初めての経験で手に取ると石鹸のいい香りがした。
「服、ありがとうございます」
「俺のでごめんね。姫奈ちゃんの服は洗濯機に入れてるから」
姫奈はこくりと頷くと所在なげに室内を見回した。
狭いから、どこに座っても大輝と距離が近くなってしまう。
「そんなに軽快しないでよ。俺はさっきの男じゃないんだから」
大輝の言葉に姫奈は少しだけ笑って頷くと、少し距離を開けて大輝の隣に座った。
畳の目のあちこちがささくれていて指先でなぞるとチクチクした。
「畳が珍しい?」
大輝が枕元のコンビニの袋からペットボトルのお茶を取り出して姫奈に手渡してくれた。
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