海姫物語
施設に暮らし始めてからこのブザーが鳴るのは初めてのことだった。
「侵入者有り、侵入者有り」
機械音が状況を告げる。
「侵入者だって?」
エリクが青い目を細めて廊下の左右を見渡す。
そこにはいつもの光景が広がるばかりで、怪しい人物の姿は見えない。
「姫奈、部屋に戻ろう」
エリクが姫奈の右手を痛いほどに掴んだとき、白衣をきた研究員たちが廊下をかけていった。
警備員が定期的に巡回することはあっても、研究員がふたりのプライベートな空間にやってくることはまずない。
部屋に戻るタイミングを失って立ち尽くしていると、研究員たちが走ってきた方向から男がやってきた。
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