氷の法医学者と、秘密の共犯になりました
そのとき、スマートフォンが震えた。
知らない番号ではない。
さっき交換したばかりの番号。

沢渡先生。

私は一度だけ息を吸い、通話を押した。

「今井です」

『沢渡だ』

低く、感情の起伏のない声。
電話越しでも温度が低い。

「お疲れさまです」

『挨拶はいらない。三件の資料を見直した』

「え?」

思わず声が大きくなった。
周囲の視線が少しだけこちらを向く。
私は席を立ち、廊下の方へ移動した。

「もう、ですか」

『協力すると言った以上、最低限の確認はする』

最低限。
その言い方に、少し腹が立った。
私たちが何日もかけて追っている資料を、この人は数時間で見直したのか。

『一件目と二件目と三件目は、同じように見える。だが、同じ事件と決めつけるには早い。死因も、死亡時刻の幅も、生活状況も違う。共通点を探すのは必要だが、違いを切り捨てるな』

冷たい声だった。
いつも通り、淡々としていた。

「……すみません」

『謝罪はいらない。必要なのは修正だ』

「本当に一言多いですね、先生」

『一言で済ませている』

真顔で言っているのがわかる。
私は思わず眉間を押さえた。
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