氷の法医学者と、秘密の共犯になりました
私は胸が熱くなるのを感じた。

「嫌ですか」

聞いてしまってから、少し後悔した。

先生は目を伏せる。

「定義による」

「またそれですか」

「曖昧な言葉は扱いにくい」

「でも、今はそれでいいです」

先生は何も言わなかった。

その沈黙が、不思議と拒絶には聞こえなかった。

資料室を出ると、廊下の空気はひんやりしていた。

沢渡先生は先に歩き出す。
私は少し遅れて、その背中を追った。

事件のことを考えなければならないのに、胸の中はさっきの会話でいっぱいだった。

先生の過去。
救えなかった人。
死者の声で、生きている人を救いたいという願い。

冷たいだけじゃない。
弱いだけでもない。

怖いものを抱えたまま、それでも逃げずに立っている人。

そんな人の隣にいたいと思った。
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