氷の法医学者と、秘密の共犯になりました
橘さんは警察官に押さえられていた。

その顔には、もう怯えた証言者の面影はない。
悔しそうに唇を噛み、私たちを睨んでいる。

「今井さんが悪いんですよ」

橘さんが言った。

「あなたが勝手に信じたんじゃないですか。私が守ってほしいって言ったら、守る気になった。神崎さんが怖いって言ったら、神崎さんを疑った。あなたが、そういう刑事だったから」

胸に、鋭いものが刺さる。

その通りだ。
私は信じかけた。
守ろうとした。
橘さんの言葉に引っ張られて、神崎さんを疑った。

でも。

私は橘さんを見た。

「そうですね。私は、あなたを信じかけました」

橘さんの目が揺れる。

「でも、一人で走らなかった。沢渡先生が止めてくれたから。私も、立ち止まろうと思えたから」

声が震えないように、息を吸う。

「あなたの嘘に、最後まで乗らなかったのは、先生がいたからです」

その言葉を口にした瞬間、隣の先生の呼吸がほんの少しだけ変わった。

橘さんは何も言わなかった。

ただ、悔しそうに視線を逸らした。
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