氷の法医学者と、秘密の共犯になりました
救急隊が到着し、私は倉庫から運び出された。
傷は、思っていた通り浅かった。
ただ、出血が見える程度には続いていて、救急隊員が手早く処置を引き継いだ。
沢渡先生は、その瞬間ようやく手を離した。
けれど、離した手は宙で迷うように動き、すぐに握り込まれた。
先生の指先には、布越しに触れた血の気配が残っている。
それを見ないように、先生は視線を横へ逸らした。
顔色はまだ悪い。
ひどく疲れて見えた。
「先生」
私は救急車へ乗る前に呼んだ。
先生が顔を上げる。
「ありがとうございました」
「礼を言うな」
「でも」
「君が怪我をした事実は、礼で帳消しにならない」
いつもの冷たい言い方。
でも、声がかすれている。
「……すみません」
「謝るな」
「難しいですね」
「君が難しくしている」
先生はそう言って、救急隊員へ私の状態を簡潔に説明し始めた。
傷は、思っていた通り浅かった。
ただ、出血が見える程度には続いていて、救急隊員が手早く処置を引き継いだ。
沢渡先生は、その瞬間ようやく手を離した。
けれど、離した手は宙で迷うように動き、すぐに握り込まれた。
先生の指先には、布越しに触れた血の気配が残っている。
それを見ないように、先生は視線を横へ逸らした。
顔色はまだ悪い。
ひどく疲れて見えた。
「先生」
私は救急車へ乗る前に呼んだ。
先生が顔を上げる。
「ありがとうございました」
「礼を言うな」
「でも」
「君が怪我をした事実は、礼で帳消しにならない」
いつもの冷たい言い方。
でも、声がかすれている。
「……すみません」
「謝るな」
「難しいですね」
「君が難しくしている」
先生はそう言って、救急隊員へ私の状態を簡潔に説明し始めた。