氷の法医学者と、秘密の共犯になりました
救急車の中で、私は先生を見ていた。

先生は同行した。
当然のように。

真鍋先輩が「俺が付き添う」と言いかけたのに、先生が短く「俺が行く」と言った。
それ以上、誰も何も言わなかった。

病院へ向かう車内で、私は応急処置を受けながら、倉庫でのやり取りを反芻していた。

橘美里。
怯えた証言者を演じていた人。
神崎さんに知られたくないと言ったのは、神崎さんを恐れているからだけではなかった。
自分の犯行を、神崎さんの犯行に見せかけるため。

神崎さんは無関係だった。

薬剤配送を操作していたという話も、電子記録を消していたという話も、封筒を持っていたという話も、脅していたという話も、橘さんの作り話だった。

神崎さんが厳しい人なのは本当かもしれない。
職場で圧のある人だったのかもしれない。
橘さんは、彼に自分の嘘を見抜かれることを恐れていたのかもしれない。

でも、事件そのものには関わっていない。

私は、申し訳なさで胸が重くなった。

疑った。
橘さんの言葉に引っ張られた。
神崎さんを犯人のように見ていた。

それでも、最後に止まれた。
沢渡先生が止めてくれた。
先生の言葉があったから、私は証言者の言葉を鵜呑みにしなかった。

相棒。

その言葉が、また胸の中で震える。

けれど、倉庫で先生が言った言葉は、それだけでは片づけられなかった。

怖い。
だが、君を失う方が怖い。

これは、相棒だから?

私は救急車の天井を見つめた。

沢渡先生は、私の横に座っていた。
視線は救急隊員の手元ではなく、私の顔に向けられている。
血を見ないようにしているのだとわかる。

でも、逃げてはいない。

その姿を見ていたら、胸が苦しくなった。

私は、先生にとって特別でありたいと思っている。

その自覚が、音もなく落ちてきた。

相棒だから心配してくれた。
そう思おうとした。

でも違う。

私は、先生に呼ばれたい。
この人の隣に、いたい。
私は、この人の特別になりたい。

それはもう、相棒という言葉では隠しきれない。

恋だ。

痛みより先に、その事実が胸を熱くした。
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