氷の法医学者と、秘密の共犯になりました
私はフロアに戻り、資料を抱え直した。

「真鍋先輩」

「ん?」

「三件の医療関係の接点、もう一度洗います。外来だけじゃなくて、在宅医療、訪問看護、薬の管理まで」

「沢渡先生から?」

「はい」

「相変わらず仕事が早いな、氷の先生」

その呼び方に、私は少しだけ目を伏せた。
真鍋先輩は気づかない。

「手、足りるか?」

「足ります。……足りなくてもやります」

「それ、危ない刑事の返事だぞ」

「事件を止めるには必要です」

真鍋先輩がため息をつく。

「今井、お前は真面目すぎるんだよ」

「不真面目よりいいです」

「そういう話じゃない。真面目なやつほど、自分の限界を無視する」

その言葉を聞いた瞬間、なぜか沢渡先生の声が重なった。

君は勢いで動くタイプに見える。

私は首を振って、その声を追い出した。

「大丈夫です」

「その大丈夫は信用できない」

「先輩に言われたくありません」

「俺は適当に休む才能があるからな」

真鍋先輩は笑いながら、自分の端末を引き寄せた。

「一件目の会社員、在宅医療の記録があるか確認する。お前は二件目と三件目を見ろ」

「ありがとうございます」

「沢渡先生に使われてるみたいで癪だけど、方向性は悪くない」

私は頷き、席に戻った。
< 9 / 103 >

この作品をシェア

pagetop