氷の法医学者と、秘密の共犯になりました
事件の進展は、その後一気に畳まれていった。

真鍋先輩が処置室の外で状況を報告してくれた。

旧倉庫で確保された端末は、看護主任用端末だった。
アクセスログの一部には、橘さんの端末から薬剤管理画面に入った痕跡が残っていた。
夏目莉子さんのスマホ写真の端に写っていた訪問バッグの補修テープと、橘さんのバッグは一致。
藤堂さんの自宅に残っていた封筒からは、白峰メディカルケアの備品保管庫にあった封筒と同じロットの可能性があるものが見つかった。
藤堂さんの妻の「封筒を渡したのは女性だった」という証言も、改めて確認された。
橘さんの訪問ルートと、藤堂宅を訪れた前日の夕方の時刻が重なることも、記録上見えてきた。
そして何より、神崎さんに関わる客観証拠は、どこにもなかった。

あったのは、橘さんの言葉だけ。

神崎さんが薬剤配送を操作していた。
神崎さんが電子記録を消していた。
神崎さんが封筒を持っていた。
神崎さんに脅されていた。

それらはすべて、神崎さんへ誘導するための嘘だった。

神崎さんは、厳しい事務長だった。
現場から煙たがられることもあったらしい。
橘さんにとっては、自分の記録漏れや矛盾を見抜かれるかもしれない相手だった。

だからこそ、橘さんは神崎さんを利用した。

恐れているふりをして。
怯えた証言者を演じて。
私の正義感を、自分の盾にした。

悔しかった。

自分が未熟だったことも。
橘さんに利用されたことも。
神崎さんを疑ってしまったことも。

でも同時に、私は思った。

最悪の単独行動は避けられた。
沢渡先生が止めてくれたから。
そして私も、立ち止まることを選べたから。

二人で真相に届いた。

そう思いたかった。
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