氷の法医学者と、秘密の共犯になりました
明け方、真鍋先輩が処置室のカーテンを少し開けた。

「今井、調子はどうだ」

「大丈夫です」

「沢渡先生に怒られそうな返事だな」

「さっきから怒られています」

「そりゃそうだ」

真鍋先輩は苦笑し、それから沢渡先生を見た。

「先生も、顔色悪いですよ」

「問題ない」

「それ、今井の大丈夫と同じくらい信用ならないですね」

沢渡先生は黙った。

真鍋先輩は、珍しく茶化しすぎなかった。

「橘は署に移しました。証拠類も押さえています。神崎には明日、改めて事情を説明することになります。疑いが晴れたとはいえ、彼も精神的に相当きついでしょうね」

「すみません」

私が言うと、真鍋先輩は首を振った。

「疑うのが仕事だ。ただ、決めつけないのも仕事だ。そこは、沢渡先生がいてくれて助かったな」

沢渡先生は何も言わない。

でも、視線が少しだけ私へ向いた。

真鍋先輩はそれに気づいたのか、にやりと笑いかけて、でもすぐに引っ込めた。

「まあ、今日は休め。今井はもう少し処置があるんだよな? それが終わったら帰宅」

「はい」

「沢渡先生は、この後どうされます?」

「今井に付き添う」

即答だった。

真鍋先輩の眉が上がる。

「へえ」

「何だ」

「いえ、別に。相棒思いだなと思っただけです」

「相棒では――」

先生が言いかけて、止まった。

私は先生を見る。

先生は少しだけ目を伏せた。

「……今は、その話をする状況ではない」

否定しなかった。

それだけで、胸がまた熱くなる。

真鍋先輩は満足そうに頷いた。

「はいはい。じゃ、俺は署に戻ります。今井、無理すんなよ」

「はい」

カーテンが閉じられる。

また、二人だけになった。
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