氷の法医学者と、秘密の共犯になりました
相棒。

そう呼ばれるたびに、胸の奥が少し熱くなった。

でも、本当は違ったのかもしれない。

相棒だったから隣にいたのではなく、隣にいたいから相棒でいたかったのかもしれない。

先生の秘密を守る理由は、もう事件のためだけではない。

初めて知った時、私はその秘密を利用した。
生きている人間の血が苦手だという、氷の法医学者の弱さ。
それを武器にして、協力を引き出した。

でも今は違う。

先生が怖がる姿を知っていることは、弱みではなくなっていた。
誰にも見せない傷を、私だけが少し知っている。
それは、脅しの材料ではなく、預けられた大切なものだった。

守りたい。
誰にも渡したくない。

そう思う理由に、もう正義とか事件とか、そんな名前はつけられない。

これは、恋だ。

認めた途端、胸が苦しくなった。

私は机の上に置いていた封筒を手に取った。

監察医務院に返す事件資料の写しと、藤堂さんの回復報告。用件はある。形式上は、自然な訪問だ。

でも、自分ではわかっていた。

本当の理由は、先生に会いたいからだ。
< 96 / 103 >

この作品をシェア

pagetop