麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
周りに、連れてきた数人の使用人たちが控えていたことをすっかり忘れていた。
ハルカもカーヴィンも、少し離れた位置で凛と立っている。
さすが、皆、特に気にした様子を見せず、何なら風景と同化するほど気配を消していた。
使用人の鑑である。
恥ずかしすぎて顔を覆うが、あとの祭りだ。
リードネストは、全く気にしておらず、突然顔を覆ったモモネリアを首を傾げてみていた。
........そういえば、リードのお仕事もまだ詳しく知らないのよね。聞いてもあまり話してくれないし。
........まぁ、いつか話してくれるわよね。
秘密にされるのは少し寂しく思いながら、リードネストの愛は日々溢れるほど感じていたので、のんびり構えなければと自分に言い聞かせる。
「ここでお昼を食べて、少し休んだらまた出発しよう」
「うん!わかった」
使用人に、ピクニックの準備を指示するリードネストの側に、カーヴィンがやってきた。
「......ご歓談中に失礼致します、旦那様。少々、宜しいでしょうか?」
美しい礼をとり、目で「こちらへ」と促すカーヴィンに、何か仕事の話だろうと察したリードネストは、頷いた。
モモネリアに断りを入れてからカーヴィンのあとをついていく。
「......モモネリア、すまない。少し離れる」
「えぇ。大丈夫よ。........その間、お花畑を見て回っていてもいいかしら?」
「あぁ、もちろんだ。でも、あまり離れすぎないように。目の届く範囲でな」
念を押されて、苦笑いする。
リードネストはモモネリアに激甘だが、過保護な面がある。
基本的にモモネリアがお願いすれば聞いてくれるが、危険な目に合わないように細心の注意を払い、護衛も多めにつけられる。
リードネストと別行動の場合は、特に念入りに言い聞かせられることばかりで、「大丈夫だ」と言っても譲らないのだ。
モモネリアに何かあったら生きていけない、と大袈裟に言われ、半ば諦めている。
リードネストを見送り、自身もゆっくり花畑の方へ足を向けた。