麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
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「.........私、いつの間にこんなところまで来ていたのかしら」
リードネストとわかれ、ウキウキと花畑を自由に見て回っていたら、なんだか引き寄せられるように端のほうまでやってきていた。
かろうじて、先ほどまで乗っていた馬車は見えるが、かなり小さい。
こんなに離れるつもりはなかったのだが、不思議だ。
「......戻らなきゃ。リードが心配する」
そう思うのに身体はちっとも動かず、むしろ何かを探し求めるようにすぐそばの瑞々しく咲く花たちをかき分けていた。
カサカサ......カサ。
「........あら?........誰?ちょっと.....あなた、大丈夫?」
しっとり冷たい花びらに掌をくすぐられながら、かき分けられた花の根本へ視線を落とすと、そこに何かがいる。
それは明らかに意識がなく、柔らかな葉の上に身体を横たえていた。