麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
そんなことを考えながら、その生き物をそっと両手で掬いあげる。
動かしても目を覚ます様子はない。
モモネリアは、手のひらで眠る生き物を見つめた。
そして、その状態で考えあぐねた。
.......どこへ連れて行こうかしら?
........どこかに移動させて.....それで、一人残していくの?
.........いつ目を覚ますかもわからないのに。もし、意識のない間に誰かに襲われたら?
悪い考えが一気に押し寄せ、そわそわ落ち着かない。
そして、それとは別に僅かに自分の心に言い表し難い......何か後ろ髪を引かれるような思いがあることに気づく。
.......なんだか、この子から離れられないわ。
先ほどまで、暑かったら可哀想だからと移動させることを考えていたというのに、この生き物に触れた瞬間、一人残していけない気持ちが膨らみ、心の片隅で離れたくないという思いが生まれていた。
モモネリアは、自分の気持ちの変化に戸惑い、美しい眉を下げた。
........何かしら。この気持ち?
私、今初めて会ったこの子を連れて帰りたいと思っている?
モモネリアは、本来、生き物を飼うのは苦手だ。
怪我をした野鳥を保護し、一時的に世話をしたことはあるが、その野鳥でさえ怪我が治れば未練もなくすぐに自然にかえした。
すっかり元気を取り戻した野鳥は、待ってましたとばかりに青空に羽ばたいていった。
それが本来の鳥の姿であるし、モモネリアは嬉しかった。
生き物が嫌いというわけではない。
むしろ、好きだろう。
だが、それは自然に生きる生き物が好きという意味だ。