麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
ピクリ、と掌の上で、小さな生き物が身体を震わせた。
ゆっくりと。まるでスローモーションで蕾が花開く様を見ているように......髪と同じ色の長いまつ毛が揺れ、瞼があがる。
そこから見えたのは、琥珀色の宝石と見紛うほどの神秘的な瞳。
モモネリアの視線と絡まると、その宝石のような目が優しげに細められた。
「.......やっと、逢えたね」
小さくて可愛らしい唇が動いて、脳に直に話しかけられたみたいに鮮明に言葉が響く。
モモネリアは、初めて感じたその感覚に驚いた。
同時に、今、聞こえた言葉の意味が理解できず戸惑った。
そのまま視線を外せずにいると、フッと綺麗な顔立ちに笑みを浮かべて、その生き物は上品な動きで上体を起こした。
そして、モモネリアの掌の上で立ち上がると、畏まった様子で右手を胸にあて、腰を折った。
「.......私の名前は、ローネル。よろしくね、愛らしいお嬢さん。......あなたのお名前をうかがっても?」
まるで、絵本の中から飛び出してきたみたいだと、ほぅっと見惚れてしまった。
それほど幻想的な容姿と声、仕草だった。
名前を問われて、ハッと我に返ったモモネリアは、慌てて自分の掌を少し上げて、ローネルの目線を自身のそれと合わせて軽く頭を下げた。