麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
「ご、ごめんなさい。あまりに、あなたが綺麗で見惚れてしまって。......私は、モモネリア・クローネ。この国には隣国から来ているの」
「......モモネリア。とっても素敵な名前だね。私の大好きな“桃“と同じ響きだ」
ローネルは、宝物を包みこむような穏やかな声音でモモネリアの名を呼んだ。
「.......“桃“はね、私たちの国では不老不死の果物とされてるんだ。花や枝、葉にも邪気を払う力があるといわれていて、とても縁起がいいんだよ。それから.......」
そこまで言って言葉を切ったローネルは、じっくり幸せを噛み締めるような顔をした。
次の言葉を促して、モモネリアは首を少し傾げた。
ローネルは、ゆるりと首を横に振る。
「......ううん、いいんだ。なんでもない」
「.......そう」
モモネリアはローネルが言いかけた言葉が気になったが、その顔を見る限り悪い話ではないのだろうし、何よりローネルが幸せそうだからいいかと、それ以上は聞かなかった。
「それより、モモネリアは一人でこの国に?」
そう問われて、再びハッとして慌てふためいた。
「っ!!.....そうだった!ごめんなさい、ローネル。私、そろそろ行かないと.......。一緒に来た人たちを待たせているの」
「誰かと一緒に来たの?......ねぇ、モモネリア。.......私も一緒に連れていってくれない?」
「え?」
ローネルが、可愛らしく上目遣いでおねだりしてきて、モモネリアはきょとんとして、聞き返した。