麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
「.......あっ」
二人の焦った声が重なるが、知ったことではない。
自分の目線の高さまでローネルを上げ、不機嫌を隠さずに至近距離でジロリと睨む。
「連れてはいくが、モモネリアにベタベタするのは禁止だ」
牽制を込めてそういえば、ツーンと唇を尖らせて、ローネルはそっぽを向く。
バチバチと火花が散りそうな険悪な雰囲気に、モモネリアはオロオロしてから、やがて、面白くなってきた。
女の子にそんな雑な扱いを?と少々疑問だが、喧嘩するほど仲がいい、という諺があったような気がする。
もしかしたら、二人は気が合うのかもしれない。
何だか、モモネリアの中であさっての方向に結論が出されていることに二人は気づかない。
「ふふっ。まるで兄妹喧嘩みたい。リード、ローネルは女の子よ?お手柔らかにね。......でも良かった。ローネルにお願いされて、リードに確認してあげるって約束したら、すぐにリードが迎えに来てくれるんだもの。すごいタイミングだったわ」
無邪気に愛らしい笑顔で笑う番に、リードネストは苦しくなった。
モモネリアは、本当にわかっていない。
獣人の独占欲や嫉妬心も。
それから、この、ローネルのこともーーーー。
こいつは、おそらくドワーフだ。
今は力をあらわにしていないが、必ず何か不思議な力を持っているはずだ。
さっき、俺はモモネリアの姿が見えず探していた。
それなのに、何かの力に阻まれるようにモモネリアの気配を花畑一面どこにも感じられなかった。
もちろん、モモネリアたちが立っていた場所も見たはずだ。
だが、確かにあの場所にはモモネリアはいなかった。