麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜



 ぼんやりと闇が覆う中、満月の光を反射してキラキラ波打つ水面。




 空に浮かぶ月は黄色のはずなのに、なぜかその水面も、月が落とす影も、一面桃色にも見えて。



 物語の一ページを切り取ったみたいに、幻想的な場所だった。





 その不思議な湖のほとりで、10歳くらいの背格好をした男の子と女の子が寄り添って、腰を下ろしている。




 二人の姿はうっすらと、柔らかく、発光している。



 男の子は、女の子よりもぼやけて見えて輪郭がはっきりしない。



 しかし、二人とも人間ではないことがわかった。




 男の子は、何やら手に持ち、一口かぶりつく。




 そして蜜に濡れた指先で、そっと隣の女の子の口元にそれを運んだ。





「.......はい、半分こ。ふふ........おいしいね」





 女の子は小さな口をまるく開けると、落ちてくる長い髪を耳にかけながら素直にそれを齧った。





「..........うん。おいしい」




 女の子の口の端から、一雫の蜜が伝う。




 男の子はその蜜に顔を近づけ、舌でペロリと舐めとった。



 女の子は驚いて、舐められた場所に手を当て固まっている。




 男の子はその様子を見て、愛おしげに目を細めた。





「........ほら。もう一口」




 男の子は、優しく次の一口を促す。




 女の子はコクンと頷き、ゆっくりまた口をつける。




 交互に食べてやがて全て食べ終えると、男の子は袖の裾で隣の女の子の口を拭ってあげた。





 とても嬉しそうに微笑んだ男の子を、女の子もはにかみながら見つめている。





「......これで、また........。........でも一緒に........。..........は二人を..........。必ず君を...........」







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