麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜


 風は少し涼しくなり、肌寒さすら感じる。


 護衛の女性が、サッとストールを出してくれた。



 夏の涼しい時間帯にちょうどいい、レース編みの生地を重ね厚みをもたせたもので、冷えやすい肩やお腹周りがあたたかくなる。




「そろそろ帰ろうか、ローネル」



「.......ねぇ、モモネリア。私、もうひとつ行きたいところがあるんだ」



 モモネリアの肩に乗っていたローネルは、ふわっと浮いて彼女の目線の高さでとまった。



 
「え?」


「一緒に行ってくれる?」


 そして、彼女の目をじっと見つめ、尋ねる。



「........えぇ。もちろん」



 その真剣な眼差しを受けて、拒否などできない。


 リードネストが仕事から帰ったときに、モモネリアがいないと心配するだろう。


 だが、まだ彼が帰るまでには少し余裕があるはずだ。



 あと一つくらい寄り道しても......きっと大丈夫。




**********






 キィーー。



「.......着いたよ」



「.......教会?」



 ローネルに連れられて行った先は、街の通りからすぐの裏路地を抜けたところにあった古い教会。


 見たところ、ずっと前に建てられた建物のようで、築何百年と経っていそうな雰囲気すらあるが、建物の造りがしっかりしていたのだろう。



 まだまだ、その姿を残していた。


 外観は、汚れや劣化が目立つ。


 屋根の上には何やら取り付けられていたものが、崩れ落ちた痕跡があるので、十字架が、設置されていたのかもしれない。



 蜘蛛の巣が張ったドアノブを、ローネルが小さな口で「ふぅー」と息をふきかけ払ってから、開ける。



 金属の錆びた音が響いたが、教会の中はそれほど劣化はひどくない。

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