麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
入り口から奥まで壁一面、一続きのステンドグラスでできており、日が差し込むと床に色とりどりの透明な花が咲いたようだ。
もう使われていない教会みたいだが、誰か手入れしている者がいるのか、よく見るとステンドグラスは磨かれ埃でくもっていたりもしない。
さらに奥にも部屋があるのか、祭壇の背後にも小さなドアがある。
「そう。教会。.......覚えてる?」
「..........え?」
羽も生えていないのに身体は宙を舞い、自分の目の前を行くローネルの神秘的な姿を目で追う。
ステンドグラスの光の中で見ると、本当に物語のワンシーンのようだ。
ゆっくり祭壇の近くまで進んでいくその後ろをついていった。
そのとき聞こえてきた声は、いつもより少し低い。
というか、そんな声だったか。
なんというか.......いつもは、もう少し高い........落ち着いてはいるが確かに女性の出すそれだった気がする。
今の声は.......まるで男性のものだ。
突如変化した声に驚いているはずなのに......何故か安心感を覚える、低く落ち着いた声。
モモネリアは、首を傾げた。
「.........覚えていないわ。だって、ここには来たことがないもの。この国に来るのも初めてなのよ」
「...........」
ローネルは彼女の返答に何も言わず、向こうを向いたまま固まった。
そして、ゆっくりと.......見せつけるみたいに緩慢な動きで身を翻し、モモネリアと向き合う。
と、その途端ーー。