麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
そして、気づいたらこの教会に来ていたらしい。
ロイドは、再び彼女を強く抱きしめた。
そして、身を離すと彼女の濡れたグリーンの瞳を覗き込む。
「ねぇ、カレン.....少しだけ待ってて?」
「......?.....えぇ」
彼は、すぐに立ち上がり、ドアの方に向かって走った。
それからどのくらい経っただろうか。
ぼんやり物思いに耽っていたカレンだったが、気づけばロイドが息を切らして彼女の目の前に立っていた。
手に、何か持っている。
宝物みたいに包み込んだ両手の中には、薄桃色のまんまるおいしそうな果物が乗っていた。
「.....これは?」
「ふふ、桃だよ。瑞々しくて、とっても甘いんだ。香りもいいんだよ」
そういうと、ロイドは彼女の鼻のそばにそれを持っていった。
「......いい香り!」
「でしょ?.....ねぇ、カレン。これを、僕と半分ずつ食べよう?」
「これを?....もちろんいいわよ。私も食べてみたいわ。....でも、なぜ?急に桃、なの?」
カレンは不思議だと言わんばかりに首を傾げる。
そりゃ、そうだろう。先ほどまでしていたあんな話から、なぜ桃が出てくるのか。
全く繋がりが理解できず、突拍子もない提案に思うのも無理はない。
「......この桃はね、特別な桃なんだ。桃は昔から不老不死の果物とされていてね。花や枝、葉にも邪気を払う力があるといわれている。縁起のいい果物なんだ。でもね.....実は、それだけじゃなくって....別の云い伝えもあるんだ」
「云い伝え.....?」
ロイドはコクリ、と頷く。
そして、その答えを明かさぬまま、カレンに問いかけた。