麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
ザァーッと強い風が吹き抜けた。
教会の中で。
......な、なに?
思わず目をぎゅっと閉じて、すぐに薄く開ける。
風に巻き上げられる自身の長い桃色の髪の毛で視界が遮られる。
ゆっくり風がやみ、髪の毛がストンと背中と肩に落ちるとーーーー。
目の前に、自分よりも大きな男性が片膝をつき屈んでいた。
モモネリアよりも少し高い位置から見下ろす視線は、妖艶で、危うさを含んでいる。
数十センチの距離の近さに、ゴクリと唾を飲み込む。
チラリと視線を滑らせると、先ほどまでふわふわ飛んでいたローネルが消えている。
「........え.......だれ?......ろー、ねる?」
その問いに、男性はニヤリと口の端をあげた。
「もちろん、僕だよ......カレン」
「.......その身体.......ど、うして」
「.......力で大きくしたんだ。ドワーフのままだと君に..カレンに口づけられないからね」
「...........」
「ドワーフの婚姻は、口付けをもって完了する。ドワーフたちは生涯寄り添うと決めた相手と婚姻を交わす。結婚式でキスを交わし、ただひとりの相手として自らの妖力のもと婚姻契約を行うんだ」
「.........う、そ」
「本当だよ。さぁ、カレン。僕と誓いの口付けを.....この、思い出の教会で。そして、帰ろう?......僕たちの家に」
「.......」
今まで、リードネストに大切にされてきた思い出が一気に蘇り、涙が溢れそうだ。
私が消えたら、きっとリードネストは悲しむ。
リードに悲しんでほしくない。
何より、私がリードと一緒にいたい.....。
リードに会いたいーー。