麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
「カレン、こっちを向いて?」
ローネルはそっとモモネリアの頬に手を添え、いつの間にか俯いていた彼女の顔をあげさせようとする。
瞬間、モモネリアは肩を跳ね上げ、必死に抵抗する。
「い、いや!....やめて!」
顔を勢いよく背け、ローネルの手を振り払う。
そして、逃げたい一心で、ズルズルと何とか身体を後退させた。
だが、そんな小さな距離など自分よりも大きな男性にとってはすぐさま縮まる距離だ。
呆気なく大股で距離を詰められ、圧倒的な力で肩をつかまれれば、もう逃げることは叶わなかった。
「.......どうして僕を拒否するの?.....約束、したでしょ?カレン。......来世でも会おうって。.....やっと.....やっと出会えたのに......どうして、どうして僕から逃げるの?」
それは、心からの問いかけだった。
ローネルは苦しげに眉間に皺を寄せ、悲しみに顔を歪めている。
モモネリアは、ローネルのその表情をみて確かに苦しくなった。
でも、それは懐かしさを覚えつつも約束の記憶はない申し訳なさと、現世の自分が彼と同じ熱量で、同じ気持ちで、彼を求めていないことに対しての苦しみだった。
モモネリアは、ローネルの気持ちに応えられない。
前世では、どうだったかなんてわからない。
だが、今のモモネリアが求める人はただひとり。
そう......もう、モモネリアの心には決めた人がいるのだ。