麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜


「.......きゃぁ!!」





 突然、ローネルとモモネリアを中心に、周囲を突風が渦巻いた。




 その風の凄まじさは、嵐の如き。

 あまりの勢いに、目を開けていられない。




 モモネリアは思わず瞼をきつく閉じ、両腕を顔の前に掲げ、身を守るようにすくめた。



 そんな中で、顔にそっと触れた温かな体温。




 うっすら目を開けると、何とも儚げな....何かを諦めた顔のローネルがいた。




 モモネリアは、その表情に釘付けになる。




 静かに開かれた口から言葉がこぼれた気がするが、周りを轟々と吹き荒れる風の音にかき消されて、聞き取れなかった。




 そしてーーーー。





 スローモーションの映像を見ているように、ローネルの寂しげな瞳が、力無く下げられた眉が、わずかに弧を描く唇が.......ゆっくりゆっくり近づいてくる。





 .......逃げなきゃ。






 そう思うのに、身体は固まったまま。




 抵抗できない。





 あっという間に、それはモモネリアの肌に触れた。





 キスされたのだ。


 唇ではなく.......額に。






「.......え?」




 ふっと、ローネルは笑った。


 今度は、目を細め満足げに微笑んだのだ。


 じっと、モモネリアの淡いグリーンの瞳を見据えて。




 先ほどまでの、胸を締め付ける悲しげな表情はどこにも見えない。




 モモネリアは驚いて、目を瞠った。



 彼女が未だ動けずにいるとーー。




 バン!!




 衝撃音が鳴り響いたーー。
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