麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
「モモネリア!」
すぐさまリードネストが階段をかけあがり、踊り場で立ちすくむ婚約者を抱き寄せる。
「どうして?先に寝ていてと言っただろう?」
「ごめんなさい.....。なんだか、大きな声が聞こえたから......心配になって。どうかしたの?」
「............」
どう答えたものか、思案しながら、チラリと玄関をみたリードネストの視線を追って、モモネリアも玄関を見遣る。
「......犬??」
不安げだった瞳はさっと色を変え、今度は驚きの色を見せている。
「........あぁ」
「可愛い~。もしかして、迷子犬なの?」
こぢんまりとお座りをして、きゅるん、と首を傾げている可愛らしい犬を見て、モモネリアは駆け寄った。
「あっ......モモネリア、そいつは.......」
焦って声をかけるも、モモネリアは犬のもとに辿り着き腰を低く落としてしまった。
そして、あろうことかそのままヨシヨシと体を撫で始めた。
ローネルも、お座りの姿勢のまま、気持ちよさそうに目を細め、はっはっと舌をだらんと垂らしている。
イラァッと、胸の内がざわつくが、仕方ないとモモネリアに説明することにした。
「.......はぁ。モモネリア、そいつはどうやら、犬に姿を変えたローネルだ」
ピタリと動きが静止する。
「.......ロー、ネル?......え、だって......」
口をパクパクさせながら、何かブツブツ呟く婚約者に、リードネストはまたひとつ小さなため息を漏らす。
「......しかも......あれは、お前に会いにきた」
「むぅっ!?.....“あれ“とは、さすがに失礼じゃない?」
「.........!?」
「........そして、喋る」
「...........」
........よく見れば、毛並みの色や瞳が、ローネルのそれと同じだ。