麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
「......全くさ。どうして、僕は親族席に座っちゃいけないのさ。こんな遠かったら、愛する大親友の一生に一度の晴れ姿がはっきり見えないじゃないか.......」
口を尖らせて、ぶつぶつ言うのは、ふさふさの艶のある黒い毛を輝かせ、首にはお洒落な蝶ネクタイをしたローネル。
言葉とは裏腹に、ピシリと背筋を伸ばしてちょこんとおとなしく座っている。
「.......ローネルさん。黙って下さい。おめでたい席ですよ」
隣から注意するのは、リードネストの邸でモモネリアの専属侍女として働くハルカだ。
「そうですよ。......ローネルさんが奥様にしたことを思えば、旦那様も奥様もとても寛大だと思います。結婚式に出席できるだけでもありがたいことです」
そう追い討ちをかけるのは、執事のカーヴィンだ。
異例のことだが、今日の結婚式にはリードネストの邸の使用人も招かれている。
日々の感謝と、今後もよろしくという、主人二人の厚意の結果だ。
「......ちぇっ。わかってるよ」
不服そうに唇を突き出しながらも、すぐに自然と口元が綻んでくる。
目の前には、パタパタと忙しなく尻尾を揺らすガタイの大きな獣人の男と、この世で一番大切な親友。
祭壇で愛する人と笑い合う彼女は、このうえなく美しかった。
「......愛してる、モモネリア。一生、君だけを」
「.....私もよ、リード。ずっと、ずっと。一生、愛してる」
唯一無二の番の二人は、皆の祝福を受け、花咲くように満面の笑みを浮かべる。
これからの人生を、愛する人と歩んでいける喜びに震えながらーー。