麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜


 どうしようーー。



 モモネリアは、得体の知れない恐怖に襲われた。



 誰?
 どうして私を攫ったの?
 私は...これからどうなるの?



 頭は軽くパニックを起こして、呼吸が荒くなる。
 ぜいぜいと大きく息を吸うのに、ちっともうまく息が吸えない。


 どんどん苦しくなり、ついには「ヒュッ...ヒュッ...」と少しも酸素を取り込むことができなくなった。


 やだ...苦しい...っ!!
 だれか...たす...けて...っ!!



 そう思った瞬間、部屋のドアが「バン!」と勢いよく開いて、大きな影がぬっと入り込む。


 酸欠で視界が暗くなっていくなか、その正体を捉えることはできない。


 それはものすごい速さで、私の隣まで来ると慌てた様子で何か必死に話しかけてくる。


 大きくて温かな手が、背中をさすってくれる。


 その手つきは優しくて、先ほどまで感じていた恐怖を吹き飛ばしてくれる。


 袋を差し出され、口に添えてゆっくりと呼吸を促される。徐々に落ち着きを取り戻して、息が吸えるようになると、視界がクリアになった。


 背中に添えられた手は、包み込むように肩に回され力がこめられたかと思うと、そっとその手の主の胸に抱き寄せられる。


 手と同じ大きな胸に頭を預け、トクントクンと少し早いリズムを刻む音に耳を傾け目を閉じた。






 どのくらい時間が経っただろうか。
 しばらく気を失っていたのかもしれない。


 とろとろと意識が浮上すると、私はまたベッドの上で横たわっていた。しっかり掛け布団がかけられている。


 夢....?


 もう何がなにだかわからずに、ただ呆然とした。





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