麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
どうしようーー。
モモネリアは、得体の知れない恐怖に襲われた。
誰?
どうして私を攫ったの?
私は...これからどうなるの?
頭は軽くパニックを起こして、呼吸が荒くなる。
ぜいぜいと大きく息を吸うのに、ちっともうまく息が吸えない。
どんどん苦しくなり、ついには「ヒュッ...ヒュッ...」と少しも酸素を取り込むことができなくなった。
やだ...苦しい...っ!!
だれか...たす...けて...っ!!
そう思った瞬間、部屋のドアが「バン!」と勢いよく開いて、大きな影がぬっと入り込む。
酸欠で視界が暗くなっていくなか、その正体を捉えることはできない。
それはものすごい速さで、私の隣まで来ると慌てた様子で何か必死に話しかけてくる。
大きくて温かな手が、背中をさすってくれる。
その手つきは優しくて、先ほどまで感じていた恐怖を吹き飛ばしてくれる。
袋を差し出され、口に添えてゆっくりと呼吸を促される。徐々に落ち着きを取り戻して、息が吸えるようになると、視界がクリアになった。
背中に添えられた手は、包み込むように肩に回され力がこめられたかと思うと、そっとその手の主の胸に抱き寄せられる。
手と同じ大きな胸に頭を預け、トクントクンと少し早いリズムを刻む音に耳を傾け目を閉じた。
◇
どのくらい時間が経っただろうか。
しばらく気を失っていたのかもしれない。
とろとろと意識が浮上すると、私はまたベッドの上で横たわっていた。しっかり掛け布団がかけられている。
夢....?
もう何がなにだかわからずに、ただ呆然とした。