麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

 しかし、両親はいつも尽くしてくれるモモネリアではなく、自由奔放な姉を溺愛し、モモネリアのことなど全く構わない。

 強請れば、何でも思い通りになる姉と違って、新しい服を買ってもらったのはいつだったか思い出せないほどだ。

 それどころか、毎日の食事も、自分には家族の残り物ばかり。話しかけられることもなく、声をかけられるのは用事を言いつけられる時だけ。

 殴られることはなかったが、家族にとって自分は透明人間みたいな存在なのだと苦しかった。

 言い方は悪くなるが、ほとんど奴隷のようにこき使われてきた。

 それでも、モモネリアはいつかきっと自分を見てくれると淡い期待を抱いて、家族に尽くしてきたのだ。



 今日も、姉がどうしても食べたいと言って聞かず、姉に甘い両親は、都合よくつかえるモモネリアに命令して、姉が希望した果物をモモネリアに買いに行かせたところだった。


 姉が食べたいと言ったりんごは、このミネトーネ国では貴重な果物だ。

 気候が安定せず、日によって、暑くなったり寒くなったり、天気がコロコロ変わるミネトーネ国では、寒い地域で栽培するりんごは育ちにくい。

 そのため、輸入に頼る他なく、とても希少で高価なのだ。

 モモネリアの住む地域にはなく、一時間ほど歩いた街の小さな果物屋に時折りんごが入荷されることがあった。

 入荷の有無は、日によるため行ってみないとわからない。

 姉のために探してこいと命じられて、モモネリアは六年履き続けているボロボロの靴で懸命に遠い道のりを歩いて果物屋にやってきた。

 店先で、なんとか一つだけ残っていたりんごを手にして、買ったまではいいがーー。







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