麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
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 今日の出来事を回想していると、控えめにドアがノックされた。



「コンコン」


「...はい」



 警戒しながら返事をすると、外から声がかけられた。



「...入ってもいいか?」
 

 それは、私が攫われたときに背後から聞こえた声。
 そして、先ほど呼吸できなくなった時にも聞いた気がする声。



「...どうぞ」


 恐怖もあるが、今は声の主を確かめたかった。

 
 ガチャッ。


 控えめにドアが開くと、ものすごく背が高い人...いや...獣人が入ってきた。



 キラキラ輝く銀髪に、弧を描く眉。
 深い青色の瞳は、吸い込まれそうだ。
 高く通った鼻梁に、形のいい唇はかたく閉じられている。

 美しい銀髪の頭のてっぺんにピンと立つ二つの三角耳がピクピクと小さく揺れ、彼の背後では、パタパタと空を切るふわふわの銀の尻尾が見え隠れしている。



 .....綺麗な人。


 モモネリアは、思わず見惚れた。



「...気分はどうだ?」


 気づけばベッドで寝ているモモネリアの枕元まで来ていた彼に問いかけられて、ほうけていたモモネリアは我に返り、慌てて答える。


「...はい、おかげさまで大分良くなりました」


「そうか...良かった」



 その人は、美しい顔を緩めてホッと息を吐いた。
 そして、すぐ側の椅子に腰掛ける。


「...あの、あなたは誰ですか?さっき助けてくれたのはあなたですか?」


 おずおずと、モモネリアが尋ねると、彼は静かに口を開いた。
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