麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
ただ、気候が安定しないこのトーリェンシア国では、栽培数も伸びず、それ故に高価でとても希少だ。
モモネリアがあの瞬間にそんな桃を食べられたのは、奇跡のような偶然が重なったからである。
リードネストが昔仕事で行った場所に希少な桃の木が生えていたのを覚えていたこと。
今年は気候に恵まれ、育ちにくいこの国でもあれだけたくさん実をつけたこと。
モモネリアが食べたいと求めた時期がちょうど桃の旬の時期だったこと。
そのおかげで、運良く手に入り、モモネリアは母との宝物の記憶に思いを馳せることができた。
そんな奇跡を起こしてくれたリードネストには、感謝してもしきれない。
あの出来事をきっかけに、母に愛されていたことを思い出し、生きる気力を得たのだから。
リードネストは、「モモネリアの愛らしい名前にも同じ響きが入っているし、大切に守らないと壊してしまいそうなほど可憐で小さくて可愛い。髪の毛の色や瞳の色も、瑞々しい桃のように美しい。そして、モモネリアは俺の唯一無二の番で俺だけのお姫様だ」と溺愛ぷりを見事に発揮する理由をつけて、『桃姫』と時折呼ぶようになったのだ。