麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
「いいの?......お仕事の邪魔にならない?」


「なるものか。むしろ、モモネリアが居てくれたら俺は元気になれる。仕事にも精が出る」


「.....嬉しい!私、もっとたくさんの景色が見たいわ!.....とても楽しみよ。リード、いつもありがとう」


「......ふっ。お礼はここにしてくれ」


 満面の笑みで、お礼を言うモモネリアを目を細めて見るリードネスト。そう言って人差し指で唇を指し示し、少し屈んでみせた。

 ぼっと、真っ赤になったモモネリアは、視線を泳がせる。

 意を決して、躊躇いながらゆっくりとつま先立ちになり、リードネストの胸に両手を添えた。

 顔が近づき、柔らかな唇がリードネストのそれに重なる。



 ちゅ、と控えめなリップ音が響いた。


 リードネストは、ニィッと口の端を挙げて笑うとモモネリアの細い腰をかき抱いた。


「足りないな」


 そう言ってまた重なる唇。
 モモネリアは、瞼を閉じた。



「.......ん」


 何度かキスを交わし、はぁ、と吐息を漏らしたモモネリアはゆっくり目を開けた。

 すぐ近くに、リードネストの綺麗な顔があって、ドキドキ胸が鳴る。

 と、同時に、モモネリアはハタと固まる。


 .......しまった。ここは......。



 周りに、連れてきた数人の使用人たちが控えていたことをすっかり忘れていた。

 ハルカもカーヴィンも、少し離れた位置で凛と立っている。


 さすが、皆、特に気にした様子を見せず、何なら風景と同化するほど気配を消していた。

 使用人の鑑である。
 恥ずかしすぎて顔を覆うが、あとの祭りだ。


 リードネストは、全く気にしておらず、突然顔を覆ったモモネリアを首を傾げてみていた。



 ........そういえば、リードのお仕事もまだ詳しく知らないのよね。聞いてもあまり話してくれないし。


 ........まぁ、いつか話してくれるわよね。



 秘密にされるのは少し寂しく思いながら、リードネストの愛は日々溢れるほど感じていたので、のんびり構えなければと自分に言い聞かせる。


「ここでお昼を食べて、少し休んだらまた出発しよう」


「うん!わかった」


 使用人に、ピクニックの準備を指示するリードネストの側に、カーヴィンがやってきた。



「......ご歓談中に失礼致します、旦那様。少々、宜しいでしょうか?」


 美しい礼をとり、目で「こちらへ」と促すカーヴィンに、何か仕事の話だろうと察したリードネストは、頷いた。


 モモネリアに断りを入れてからカーヴィンのあとをついていく。



「......モモネリア、すまない。少し離れる」


「えぇ。大丈夫よ。........その間、お花畑を見て回っていてもいいかしら?」


「あぁ、もちろんだ。でも、あまり離れすぎないように。目の届く範囲でな」


 念を押されて、苦笑いする。


 リードネストはモモネリアに激甘だが、過保護な面がある。

 基本的にモモネリアがお願いすれば聞いてくれるが、危険な目に合わないように細心の注意を払い、護衛も多めにつけられる。

 リードネストと別行動の場合は、特に念入りに言い聞かせられることばかりで、「大丈夫だ」と言っても譲らないのだ。


 モモネリアに何かあったら生きていけない、と大袈裟に言われ、半ば諦めている。


 リードネストを見送り、自身もゆっくり花畑の方へ足を向けた。


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