麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜


「っ!!ローネル、大丈夫?........リード。やっぱりこの子が心配だよ。せめて体調が戻るまで、一緒に連れて行ってあげられないかな?」




 純粋にローネルのことを気にかけているだけなのは理解しているが、他の者にモモネリアの関心が向けられていることが耐えがたい。




 それでも、そんな潤んだ瞳で見られては。


 上目遣いでお願いされては。




「ぐっ.....はぁ。わかった。体調が戻るまでなら」



 リードネストは、愛する番の願いを全て叶えたくなってしまう。




 例え、自分の独占欲と嫉妬心を掻き立てられる願いであっても......。




 どこまでも、リードネストはモモネリアに弱いのだ。



 目的地に到着後、また復路でも同じ道を通る。




 ........その時に、あいつを元の場所におろしてやればいいだろう。




「いいの!?ありがとう、リード!」




 ぱぁっと表情を明るくして、お礼を言うモモネリアを心底可愛いと思い、口元が緩んだ。




 内心モヤモヤするが、やはりモモネリアが喜ぶのは嬉しい。




 そう思い願いを聞き入れて良かったと感じた瞬間ーーーー。





「やった!モモネリア、これで一緒にいられるね」





 モモネリアの掌で飛び起きて、彼女の細い指に抱きつき、滑らかな白い肌に「ちゅっ」と口付けたローネルを見て、また苛立ちが再燃する。




 思わずリードネストは、笑顔で見つめ合う二人の間に入るためローネルの首根っこを指でつかんで、つまみあげた。





「.......あっ」




 二人の焦った声が重なるが、知ったことではない。





 自分の目線の高さまでローネルを上げ、不機嫌を隠さずに至近距離でジロリと睨む。




「連れてはいくが、モモネリアにベタベタするのは禁止だ」




 牽制を込めてそういえば、ツーンと唇を尖らせて、ローネルはそっぽを向く。





 バチバチと火花が散りそうな険悪な雰囲気に、モモネリアはオロオロしてから、やがて、面白くなってきた。




 女の子にそんな雑な扱いを?と少々疑問だが、喧嘩するほど仲がいい、という諺があったような気がする。



 もしかしたら、二人は気が合うのかもしれない。




 何だか、モモネリアの中であさっての方向に結論が出されていることに二人は気づかない。





「ふふっ。まるで兄妹喧嘩みたい。リード、ローネルは女の子よ?お手柔らかにね。......でも良かった。ローネルにお願いされて、リードに確認してあげるって約束したら、すぐにリードが迎えに来てくれるんだもの。すごいタイミングだったわ」




 無邪気に愛らしい笑顔で笑う番に、リードネストは苦しくなった。




 モモネリアは、本当にわかっていない。


 獣人の独占欲や嫉妬心も。



 それから、この、ローネルのこともーーーー。





 こいつは、おそらくドワーフだ。


 今は力をあらわにしていないが、必ず何か不思議な力を持っているはずだ。




 さっき、俺はモモネリアの姿が見えず探していた。



 それなのに、何かの力に阻まれるようにモモネリアの気配を花畑一面どこにも感じられなかった。



 もちろん、モモネリアたちが立っていた場所も見たはずだ。



 だが、確かにあの場所にはモモネリアはいなかった。




 それがどうだ。



 突然、そこに彼女が現れて、掌には.......ドワーフがいた。



 ローネルがわざとモモネリアの気配を追えないように能力で妨害していたに違いない。


 モモネリアの話から推察するに、彼女が俺に許可を求めてみると約束したから、力を解いたんだろう。




 何故、そこまでして同行したいのか目的は不明だが。



 そして.......おそらくモモネリアが見ているローネルと本当のローネルは全く違う。




 ........警戒は怠らない方がいいな。モモネリアを守らねば。


 どこか鈍いところも可愛くて、どうしようもないほどモモネリアに溺れているリードネストは、困ったように眉を下げた。






 隙をついてリードネストの手から逃げ出したローネルは、羽もないのに浮くことができるらしい。




 ふわっと、まるで踊るように軽やかに宙を舞って、モモネリアの右肩に座った。





 彼女は、肩に乗ってきたローネルに一瞬驚くもすぐに受け入れて、表情をやわらげると、細い指先でそっとローネルの頭を撫でた。






 ......あぁ、ダメだ。






 それを見たら、身体が止められなかった。



 リードネストはローネルを再びつまみあげ、自分の左肩に乗せる。




 ベチャッと音がしそうなほど勢いよく着地した肩で、ローネルが目を見開いたあと、瞼を重くしてぶーぶー言っている。




 けれどそれ以上は、モモネリアにベッタリくっついていくことはなかった。





 モモネリアは、一連の流れを口元に手をあてて見つめていたが、なんとか決着がついたことを見届けると、やっぱり「ふふっ」と小さく笑った。





 その声は、爽やかな空気に溶けていったーー。






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