麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
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窓の外を見ると、既に朝日が顔を出している。
ぐっすり寝ていたようだ。
リードネストは先に起きて、ベッドの足元にある椅子に座り、新聞を読んでいたらしい。
椅子のそばの机には、紅茶が湯気を立てている。
「おはよう、リード。ごめんなさい、何でもないの。少し変な夢をみて。リードは、いつから起きて?」
「あぁ、おはよう。俺は少し前だ」
「そう」
「......ところで、変な夢、とは?」
彼は枕元に腰掛け、ベッドの背に身体を預けるモモネリアの頬をするりと撫でながら尋ねる。
ゆっくり揺れる尻尾が、腰のあたりにリズムよく当たるのがくすぐったい。
「んー.......よく見る夢なの。最近見ていなかったんだけど、また見るようになって。毎回同じ内容だから気になってるの」
「.........内容は?」
そう聞かれて、モモネリアは夢の内容を全てリードネストに話した。
彼は、神妙な顔でモモネリアの話を聞いていた。
「........そうか。話してくれてありがとう。........喉が渇いているだろう。お茶を淹れよう。それから朝食だ」
顎に手を当て、何やら思案してから、気持ちを切り替えるようにそう言うと、リードネストはモモネリアに温かな紅茶を淹れてくれた。
リードネストの淹れる紅茶は、とてもおいしい。
カーヴィンやハルカの淹れてくれる紅茶も大好きだが、モモネリアは彼の淹れる紅茶が一番好きだった。
器用なのか、モモネリアの表情をよく見て好みに合うよう淹れ方を工夫してくれているのか。
「ん。美味しい」
「.....少し落ち着いた?」
「えぇ。ありがとう。.....ローネルはどうしてるかしら?」
「いや、部屋に戻ってからは知らないな。まぁ、もうすぐ朝食だから、その時呼びに行こう。俺は、モモネリアと二人の方がありがたいが」
「またそんなこと言って」
「わかってる。ちゃんと呼びに行くよ」
誤魔化すように、モモネリアの額にキスが落とされる。
再び、紅茶に口をつけながら、モモネリアは、ふと心の中がグラグラ揺れる感覚がした。
........こんなに幸せでいいのかしら。
時折、この幸せがこわくなることはあったが、今日は、特に不安が増しているように思う。
何だか、妙な胸騒ぎがするのだ。
「......どうした?」
「え?」
「.....いや、何か考え込んでいなかったか?」
「........いえ、何でもないの。......お腹が空いたなって思っただけ」
「そうか?じゃぁ、そろそろ用意して、ローネルを呼びに行くか」
「......えぇ」
モモネリアは、得体の知れない何かに気付かぬフリをして、朝食に向かったーー。