麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

「...俺は、リードネスト・ルーバス。狼獣人だ。助けたってほどのことじゃないが...さっき、お前が過呼吸を起こした時に側にいたのは、確かに俺だ」



「...そうですか。...側にいてくださって、ありがとうございました。ルーバスさん」



 私がお礼を言うと、ゆっくりパタパタ揺れていた尻尾が、急に大きく動き出し、バタンバタンと音を立てて壁にぶつかっている。



「...リード。...リードと呼んでくれ」


 
「......リードさん」



「っっっ!!!」


 ぱぁっと表情が輝き、耳がピンと立つ。
 速度を増し、バタバタと忙しなく尻尾が振られる。
 まるで、嬉しくてたまらないような態度だ。



「...名を教えてくれないか?」

 

「....モモネリア・クローネ....です。モモネリア、とお呼び下さい」


 躊躇いがちに、ゆっくりとモモネリアが答えた。


「.........モモネリア。とても愛らしい名だ。妖精のように可憐で美しいお前にぴったりだ」



 リードネストは、とても愛おしげに、丁寧に、モモネリアの名を口にした。

 甘さを多分に含んだ声音で、勝手にドキドキと心臓が騒ぎだす。

 家族にも、そんな愛おしげに、丁寧に、呼んでもらったことなどない。

 まるで、大切で仕方がない、と全身で訴えてくるみたいに....。

 名前を呼ばれただけなのに、身体全体を優しくなでられている感覚になり、思わずうっとりしてしまう。

 しかし、何か聞きたいことがあった...ような.....。



「....あの。ここは、どこですか?」



 モモネリアは、ハッと気づいてリードネストに問う。


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