麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
*******
ローネルと行動を共にするようになって3日が経っていた。
相変わらず、リードネストはローネルに厳しく、どこか警戒している雰囲気もある。
しかし、出会って以来、夕食をともにしたり、行く先々の観光をともに楽しんだり。
ローネルは、それなりにモモネリアとリードネストと仲を深めていた。
そしてリードネストは、本来の目的である仕事を済ませるため、時折モモネリアのそばを離れる。
その間、ローネルと二人で過ごすことでモモネリアは特に寂しさを感じずにいることもできていた。
今日も彼は午後過ぎから仕事の予定が入っているらしく、空いた時間でこの国の市場の様子や特産品、土産物などを見て回ろうということになり、朝から市場に来ていたのだ。
「......さて、俺はそろそろ仕事だ。モモネリアは、どうする?」
「私は、ローネルとまだ一緒に見てまわるわ」
「.......そうか。わかった。........ただ、二人きりはダメだ。少し離れたところに護衛を数人。それから女性騎士をすぐそばにつける。いいな」
「えぇ。わかったわ、ありがとう」
「えー。またぁ?ちょっとくらい大丈夫なのに、ねぇ?モモネリア」
口を尖らせるローネルをひと睨みして黙らせ、何度も振り返りながらリードネストは仕事に向かっていった。
そうして、どれほど歩いただろうか。
気になるお店や近くの観光名所は、一通り見てひと息ついた頃には、夕方の気配が近づいていた。
風は少し涼しくなり、肌寒さすら感じる。
護衛の女性が、サッとストールを出してくれた。
夏の涼しい時間帯にちょうどいい、レース編みの生地を重ね厚みをもたせたもので、冷えやすい肩やお腹周りがあたたかくなる。
「そろそろ帰ろうか、ローネル」
「.......ねぇ、モモネリア。私、もうひとつ行きたいところがあるんだ」
モモネリアの肩に乗っていたローネルは、ふわっと浮いて彼女の目線の高さでとまった。
「え?」
「一緒に行ってくれる?」
そして、彼女の目をじっと見つめ、尋ねる。
「........えぇ。もちろん」
その真剣な眼差しを受けて、拒否などできない。
リードネストが仕事から帰ったときに、モモネリアがいないと心配するだろう。
だが、まだ彼が帰るまでには少し余裕があるはずだ。
あと一つくらい寄り道しても......きっと大丈夫。
**********
キィーー。
「.......着いたよ」
「.......教会?」
ローネルに連れられて行った先は、街の通りからすぐの裏路地を抜けたところにあった古い教会。
見たところ、ずっと前に建てられた建物のようで、築何百年と経っていそうな雰囲気すらあるが、建物の造りがしっかりしていたのだろう。
まだまだ、その姿を残していた。
外観は、汚れや劣化が目立つ。
屋根の上には何やら取り付けられていたものが、崩れ落ちた痕跡があるので、十字架が、設置されていたのかもしれない。
蜘蛛の巣が張ったドアノブを、ローネルが小さな口で「ふぅー」と息をふきかけ払ってから、開ける。
金属の錆びた音が響いたが、教会の中はそれほど劣化はひどくない。
入り口から奥まで壁一面、一続きのステンドグラスでできており、日が差し込むと床に色とりどりの透明な花が咲いたようだ。
もう使われていない教会みたいだが、誰か手入れしている者がいるのか、よく見るとステンドグラスは磨かれ埃でくもっていたりもしない。
さらに奥にも部屋があるのか、祭壇の背後にも小さなドアがある。
「そう。教会。.......覚えてる?」
「..........え?」
羽も生えていないのに身体は宙を舞い、自分の目の前を行くローネルの神秘的な姿を目で追う。
ステンドグラスの光の中で見ると、本当に物語のワンシーンのようだ。
ゆっくり祭壇の近くまで進んでいくその後ろをついていった。
そのとき聞こえてきた声は、いつもより少し低い。
というか、そんな声だったか。
なんというか.......いつもは、もう少し高い........落ち着いてはいるが確かに女性の出すそれだった気がする。
今の声は.......まるで男性のものだ。
突如変化した声に驚いているはずなのに......何故か安心感を覚える、低く落ち着いた声。
モモネリアは、首を傾げた。
「.........覚えていないわ。だって、ここには来たことがないもの。この国に来るのも初めてなのよ」
「...........」
ローネルは彼女の返答に何も言わず、向こうを向いたまま固まった。
そして、ゆっくりと.......見せつけるみたいに緩慢な動きで身を翻し、モモネリアと向き合う。
と、その途端ーー。
ローネルと行動を共にするようになって3日が経っていた。
相変わらず、リードネストはローネルに厳しく、どこか警戒している雰囲気もある。
しかし、出会って以来、夕食をともにしたり、行く先々の観光をともに楽しんだり。
ローネルは、それなりにモモネリアとリードネストと仲を深めていた。
そしてリードネストは、本来の目的である仕事を済ませるため、時折モモネリアのそばを離れる。
その間、ローネルと二人で過ごすことでモモネリアは特に寂しさを感じずにいることもできていた。
今日も彼は午後過ぎから仕事の予定が入っているらしく、空いた時間でこの国の市場の様子や特産品、土産物などを見て回ろうということになり、朝から市場に来ていたのだ。
「......さて、俺はそろそろ仕事だ。モモネリアは、どうする?」
「私は、ローネルとまだ一緒に見てまわるわ」
「.......そうか。わかった。........ただ、二人きりはダメだ。少し離れたところに護衛を数人。それから女性騎士をすぐそばにつける。いいな」
「えぇ。わかったわ、ありがとう」
「えー。またぁ?ちょっとくらい大丈夫なのに、ねぇ?モモネリア」
口を尖らせるローネルをひと睨みして黙らせ、何度も振り返りながらリードネストは仕事に向かっていった。
そうして、どれほど歩いただろうか。
気になるお店や近くの観光名所は、一通り見てひと息ついた頃には、夕方の気配が近づいていた。
風は少し涼しくなり、肌寒さすら感じる。
護衛の女性が、サッとストールを出してくれた。
夏の涼しい時間帯にちょうどいい、レース編みの生地を重ね厚みをもたせたもので、冷えやすい肩やお腹周りがあたたかくなる。
「そろそろ帰ろうか、ローネル」
「.......ねぇ、モモネリア。私、もうひとつ行きたいところがあるんだ」
モモネリアの肩に乗っていたローネルは、ふわっと浮いて彼女の目線の高さでとまった。
「え?」
「一緒に行ってくれる?」
そして、彼女の目をじっと見つめ、尋ねる。
「........えぇ。もちろん」
その真剣な眼差しを受けて、拒否などできない。
リードネストが仕事から帰ったときに、モモネリアがいないと心配するだろう。
だが、まだ彼が帰るまでには少し余裕があるはずだ。
あと一つくらい寄り道しても......きっと大丈夫。
**********
キィーー。
「.......着いたよ」
「.......教会?」
ローネルに連れられて行った先は、街の通りからすぐの裏路地を抜けたところにあった古い教会。
見たところ、ずっと前に建てられた建物のようで、築何百年と経っていそうな雰囲気すらあるが、建物の造りがしっかりしていたのだろう。
まだまだ、その姿を残していた。
外観は、汚れや劣化が目立つ。
屋根の上には何やら取り付けられていたものが、崩れ落ちた痕跡があるので、十字架が、設置されていたのかもしれない。
蜘蛛の巣が張ったドアノブを、ローネルが小さな口で「ふぅー」と息をふきかけ払ってから、開ける。
金属の錆びた音が響いたが、教会の中はそれほど劣化はひどくない。
入り口から奥まで壁一面、一続きのステンドグラスでできており、日が差し込むと床に色とりどりの透明な花が咲いたようだ。
もう使われていない教会みたいだが、誰か手入れしている者がいるのか、よく見るとステンドグラスは磨かれ埃でくもっていたりもしない。
さらに奥にも部屋があるのか、祭壇の背後にも小さなドアがある。
「そう。教会。.......覚えてる?」
「..........え?」
羽も生えていないのに身体は宙を舞い、自分の目の前を行くローネルの神秘的な姿を目で追う。
ステンドグラスの光の中で見ると、本当に物語のワンシーンのようだ。
ゆっくり祭壇の近くまで進んでいくその後ろをついていった。
そのとき聞こえてきた声は、いつもより少し低い。
というか、そんな声だったか。
なんというか.......いつもは、もう少し高い........落ち着いてはいるが確かに女性の出すそれだった気がする。
今の声は.......まるで男性のものだ。
突如変化した声に驚いているはずなのに......何故か安心感を覚える、低く落ち着いた声。
モモネリアは、首を傾げた。
「.........覚えていないわ。だって、ここには来たことがないもの。この国に来るのも初めてなのよ」
「...........」
ローネルは彼女の返答に何も言わず、向こうを向いたまま固まった。
そして、ゆっくりと.......見せつけるみたいに緩慢な動きで身を翻し、モモネリアと向き合う。
と、その途端ーー。