麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
彼女の左横に立っていた護衛の女性騎士、数メートル後ろに並んで待機していた数名の護衛たちが一斉に倒れた。
糸が切れたマリオネットのようにふっと力が抜け、バタバタと。
一瞬の出来事で理解ができず、護衛たちを見回す。
「........な、なに?.......大丈夫!?」
ハッと我に返り、駆け寄るモモネリア。
呼吸と心音を確認すると、生きていることがわかった。
「........いき、てるわ。良かった。........これは、一体、どうして?......まさか.....あなたなの?」
得体の知れない恐怖が襲ってきた。
人間のモモネリアですら感じる、ローネルから発せられている圧。
.....魔法だろうか。いや、ドワーフが操るのは不思議な力。
ローネルのもつ能力。
そう言えば、モモネリアはローネルとそんな話をしたことがない。
ローネルは、一体どんな力を持っているのか。
こんな状況になり、もっと気にかけるべきだったと後悔しても、今更遅い。
「.......そう。僕、のちから。僕、生まれつき他のドワーフたちより力が強いんだ。だから、いろんなことができるんだ」
まつ毛を伏せ、口元に怪しげな笑みを浮かべる。
「.......ぼく?あ、なた......男の子、だったの?」
ゆるゆると目を見開き、震える声で聞くモモネリア。
「.......そうだよ。騙して、ごめんね。でも、確かに君のそばにいるのに都合がいいから黙っていたけど。僕の口からは一度も女だとは言ってないよ。偶然だけど、モモネリアが、僕のことを女の子だと思ってくれて助かったよ」
彼は伏せていた視線を、モモネリアに合わせる。
「もちろん、リードは気づいていたみたいだけどね」
「.......え」
「君が僕のことを男だと認識した状態で、僕にそばに居られるよりも、女の子だと思っててくれたほうがまだそばにいることを許せたんじゃない?」
「.........」
そう言われれば、初めからリードネストの反応は、なんだかおかしなものだった。
あれは、ローネルを男の子だとわかっていたからだったのか。
わかっていたのに、黙っていた理由も何となく納得がいく。
「あ、リードのことを考えるのはなしだよ。これからは、僕のことだけ考えて」
スッと音もなくモモネリアの顔の目の前まで近づき、綺麗な顔が覗き込む。
今は、怪しげな危うい空気を連れて。
「........ローネル、どうして?......どうしてこんなことをするの?.......私を、どうするの?」
危険を感じ、声が上ずる。
