麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜


「モモネリア.....どうして.....俺のことが嫌になったのか?」




 誰からも返事はないとわかっていながら、独り言ちる。机に肘をついて、頭を抱えて大きくため息を吐いた。


 あの瞬間に何故なのか尋ねれば良かったものを、リードネストはそうしなかった。理由は明白だ。
 モモネリアの口から、拒絶の言葉を聞きたくなかった。


 もし、モモネリアから「一緒にいたくない」「顔を見るのが辛い」「嫌いだから」などと言われたら....そう思うと怖くて足がすくんだ。



「....しつこすぎた、だろうか」



 モモネリアへの愛しさが溢れて、日に何度も会いに行ったのが重かったのか。それとも、モモネリアが愛らしすぎて、我慢できずに触れすぎただろうか。


 やはり、少しは心を開いてくれたと思っていたのは、俺の勘違いだったのかもしれない。モモネリアは、自分勝手に攫ってきた俺を許しはしていないのだろう。


 そんな俺が、しつこく会いに行き、聞きたくもない愛の言葉を囁き、自分に触れ、毎日のようにプレゼントを贈ってくる。


 モモネリアはどれだけ辛く、重荷だっただろうか。

 モモネリアは人間だ。

 俺たち獣人の番への執着や、重い愛は理解できないだろう。もしかしたら、怖がらせただろうか。
< 53 / 184 >

この作品をシェア

pagetop